自賠責保険で認定された後遺障害等級の水準以上で和解しました
「自賠責保険で認定された後遺障害等級の水準以上で和解しました」
弁護士 喜 田 崇 之
【はじめに】
交通事故により恥骨骨折等の傷害を負った原告Xさんが、訴訟提起の結果、自賠責保険で認定された後遺障害等級(14級10号)以上の水準の和解を勝ち取りました。
【事案の概要】
原告Xさんは、2015年6月、自転車に乗車中に、普通自動車と衝突する交通事故に遭われ、恥骨骨折等の傷害を負いました。Xさんは、治療を続け、自賠責の申請をしたところ、14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認定されるに留まりました。
14級9号では、労働能力が5%しか喪失していないと評価され、喪失期間も2年~5年とされることが多いのですが、Xさんの生活状況や、レントゲン写真の状況から判断すると、より大きな労働能力の喪失が考えられました。また、相手方側(保険会社)は、事故態様について、Xさんの側にも一定の落ち度がある旨を主張してきました。
そのため、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2016年12月、損害賠償請求訴訟を提起しました。
【裁判の進行】
被告は、裁判で、Xさんにも本件事故の落ち度があり、過失相殺の主張をしました。また、Xさんの骨折の程度が軽いことを理由に、労働能力の喪失はせいぜい5%で、3年程度しか続かない主張をしました。
原告側で、医師の意見書や画像データ等により、Xさんに股関節の可動域制限が生じていることや、骨折部位が変形治癒されていること等を立証し、より大きな労働能力の喪失を主張・立証しました。被告側も、医師の意見書を提出し、医学的にどちらの主張が正しいかが争点となりました。過失相殺についても、事故態様を詳細に主張・立証し、Xさんに落ち度がないことを立証しました。
そして、ある程度の主張・立証が尽くされた後、2017年12月、裁判所から和解案が文書で提案されました。
【裁判所の和解案】
裁判所の和解案は、まず、Xさんの過失割合がゼロであることを前提としました。
また、労働能力の喪失割合は14%であると判断することを明らかにし(後遺障害等級12級に相当します。)、喪失期間も被告の主張を一蹴しました。結局、裁判所の和解案によって、訴訟提起前の交渉段階の水準を大きく超える和解が成立しました。
【最後に】
裁判所の和解案は、自賠責保険で認定された後遺障害等級の評価を超えて、労働能力の喪失を前提とした水準であり、本件では十分評価できるものでした。また、過失相殺についても、Xさんの過失が「ゼロ」であることを前提にしました。過失相殺は、和解の席では、ややもすると譲歩を迫られることが多いのですが、しっかりと「ゼロ」であることを明記させたことも大きな点でした。(例え、5%や10%の過失相殺でも、金額にすると大きな金額になります。)
自賠責保険の後遺障害認定を覆す判決・和解を勝ち取ることは、実務上、容易なことではありませんが、本件では、医学的観点からの主張、立証が成功した事例でした。
交通事故の示談交渉でお困りの方は、ぜひ、一度、ご相談ください。