パート・アルバイトの労働条件格差是正
パート・アルバイトの労働条件格差是正を勝ちとる 弁護士 河村学
1 なぜ労働条件がこんなに違うのか。
同じ仕事をしているのに、なぜこんなに給料や手当が違うのか?。パート・アルバイトなど非正規社員として働く方々でそういう疑問を持たれる方は多いと思います。確かに変ですよね。同じように自宅から職場に通勤しているのに、正規社員には通勤費を支給するけど、パートには支給しなかったり。また、正規社員と同じように(場合によっては正規社員以上に)働いているのに、パート・アルバイトという名前で採用されただけで、給料が半分にされたり、賞与や退職金が支給されなかったり。使用者が、さしたる根拠もなく、正規と非正規の労働条件に格差を設けているため、パート・アルバイトの多くが低処遇に苦しむ実態があります。
2 立ち上がる労働者
こんな格差をなくそうとパート・アルバイトとして働く方が立ち上がり、各地で裁判が起こされています。名付けて「20条裁判」。労働契約法20条という条文を根拠に、正規社員との、不合理な格差は認められないとして、その差額の支払いを請求するものです。これまでに出た判決では、通勤手当、住宅手当、皆勤手当、休職手当、無事故手当、作業手当、早出残業手当、時間外手当、年末年始手当、夏期冬期休暇、病気休暇などさまざまな手当・休暇について、正規と非正規の格差は不合理として、差額の損害賠償が認められています。最高裁までたたかったある事件では、不合理な格差として認定された手当類を合計すると月額3万円を超える額になりました。
格差是正はこうした手当類にとどまりません。私が担当している事件では、アルバイトに賞与(ボーナス)を支給しないのは違法であると裁判したところ、正規社員の賞与支給率の6割を支給しなければ違法という判決が出されました(現在最高裁に係属中)。また、別の裁判では、退職金についても一定額を出さなければ違法としたり、基本給についてあまりに大きな格差は違法とする判決も出されています。
3 運動があってこその変化
このような変化が起きているのは、格差是正を求める長年の取り組みと、政権交代まで実現した世論の動きがあったからで、決して、現在、安倍内閣が「働き方改革」と称してすすめている施策があるからではありません。むしろ現在の施策は、無期契約社員同士の格差を温存し、また最低賃金の大幅引き上げを拒むなど、安心で公正な働くルールの設定に背を向けています。不合理な格差を是正する取り組みを、労働組合などを通じて旺盛に取り組むことこそが、働きやすい社会をつくる一歩です。