【相続法改正】預貯金の仮払い制度
2021-09-01
【預貯金の仮払い制度】 弁護士 井上直行
民法改正により2019年7月1日から預貯金の仮払い制度が始まっていますので、ご紹介します。
預貯金の仮払い制度は、遺産分割が成立する前に、法定相続人が単独で被相続人名義の預貯金を一定額払い戻しできる制度です。この制度により、相続人はその一定額で、葬儀費用を賄ったり、当面の生活費に当てたりすることできます。単独でできる便利な制度です。
【単独で仮払いを受けられる額】
相続開始日の預貯金残高×3分の1×請求する相続人の法定相続分
ただし、金融機関ごとに上限が150万円です。
【必要書類】
①被相続人の除籍謄本・戸籍謄本(出生時から死亡時までの連続したもの)
②すべての相続人の戸籍謄本
③払い戻しを請求する相続人の印鑑登録証明書
【注意する点】
①遺言がある場合は仮払い制度の対象になりません。
「A銀行の預貯金は長男に相続させる」といった内容の遺言がある場合に、その遺言の対象となった預貯金は、預貯金の仮払い制度の対象になりません。
②仮払い制度を利用すると相続放棄できなくなります。
預貯金の仮払い制度を利用すると相続放棄できなくなる可能性があります。 相続財産を処分したり使ったりすると単純承認が成立するので、相続放棄は認められなくなります。
③他の相続人とトラブルになることもありえます。
他の相続人の知らない間に、預貯金の払戻しを受けることができるため、後に知った他の相続人との間で。トラブルの原因になる可能性もあります。