【アスベスト】建設アスベスト訴訟最高裁判決の報告
建設アスベスト訴訟最高裁判決のご報告 弁護士 高橋早苗
建設作業によりアスベスト(石綿)にばく露し、中皮腫や肺がん、石綿肺等の病気にかかった被害者やその遺族らが、国と石綿建材を作っていたメーカーに対し、損害賠償を求めていた建設アスベスト訴訟は、2021年5月17日最高裁判所判決が出され、国及び建材メーカーの責任を認める判断が確定しました。
建設アスベスト訴訟は2008年5月に東京で提訴されたのを皮切りに全国各地で提起され、私も弁護団の一員となった大阪訴訟は2011年7月に提訴しました。最初の判決である横浜地裁判決は国、建材メーカーともに敗訴となったものの、その後、東京地裁で国に対し勝訴すると、他の地裁においても国勝訴の判決が相次ぎ、国の責任は早い段階で確固たるものとなりました。また、当初否定され続けていた一人親方・個人事業主に対する国の責任も、東京高裁判決で認められると以後は労働者、一人親方、個人事業主など就労形態に関係なく責任が認められ、最高裁判決においてもこれが肯定されました。また、建材メーカーに対する責任も当初は敗訴判決が続いたものの、高裁判決において勝訴判決が続き、最高裁判決においてその責任が確定しました。いずれも屋外作業者に対する責任は否定するなど救済対象に線引きをした点等不当な点も残るものの、建設作業でアスベスト被害にあわれた方々の救済の道が大きく開けました。
そして、最高裁判決を受け、国に対する関係では2021年5月18日に基本合意が成立し、既に提訴中の原告については和解による解決が、2022年4月からは給付金制度による被害救済が始まることとなりました。他方、建材メーカーについては最高裁判決を経てもなお解決に向けた動きはなく、今後も裁判を起こし被害救済を求めていくことになります。
過去に建設作業に従事されアスベスト関連疾患に罹患した方、そのご遺族の方々など、アスベストによる被害については、上記の給付金制度や裁判以外にも労災申請や救済法の補償等複数の救済手段があります。アスベストによる被害にあわれたすべての方の救済を目指し、今後も取り組んで行きたいと思いますので、アスベストの被害にあわれた方、心配なことがある方はぜひご相談ください。