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法の支配?力による現状変更(弁護士上山勤)

2023-06-02

法の支配? 力による現状変更                        弁護士  上山  勤

1、2023年5月19日から21日までの3日間、G7の首脳会議が広島で開催された。物々しい警備の状況と首相の言葉がマスコミで紹介されていた。ウクライナに対してロシアが軍事侵攻したことを念頭に許し難い暴挙としてこれを非難している。そして、加盟国に連帯を呼びかけロシアへの軍隊の撤退の呼びかけと経済制裁の強化が訴えられた。

加えて、中国の南方進出や台湾への威嚇の行動を捉えてこれまた、表題のセリフが繰り返された。NHKほかのマスコミも官邸ぶら下がり報道の体質を遺憾なく発揮し、そのままの垂れ流しの紹介にこれ勤めていた。

2、私はテレビでこのセリフを耳にするたびに体調を崩しそうになる。腹が立つのである。素知らぬ顔をして、標記のセリフを繰り返す首相と臆面なくそのまま報道を続けるマスコミ。こんな社会でいいのか

2003年3月、アメリカ合衆国が主体となり、イギリス、オーストラリア、ポーランド等が、イラクが大量破壊兵器を保持していることを理由として、国連軍ではなく、有志連合としてイラクに侵攻し、政権を打倒した。大量のトマホークを打ち込み、劣化ウラン弾でイラクの戦車を圧倒し、20万人を超えるイラク人を殺戮した。これこそ、有無を言わせぬ武力の行使であり、一方的な実力による現状変更であった。この時、日本の首相は何をいったか。「米国の武力行使を理解し、支持いたします」と即座に表明した。法の支配とか、実力による現状変更などというセリフは小泉首相の口からは出なかった。そして、サマーワに自衛隊を派遣する。

イラクで自衛隊は、日本を守るのではない。イラク人を標的とした米軍に加担する行為だから憲法違反だ、として全国で派兵反対の裁判が提起された。大阪でも1500名もの原告が裁判に参加して、自衛隊をイラクに送るな、と訴えた。

3、都合勝手に、言葉を操る人は信頼できない。20年前にも、法の支配とか力による現状変更を認めない、とでもいっておれば信用できるのだが。今、政府は中国が力による台湾侵攻をやりかねない、として米国に同調して沖縄諸島に自衛隊基地を作り、ミサイルの配備に血道を上げている。そして、表題のセリフを繰り返すのである。この地域のミサイルは日本を守るというよりも日本に所在している米軍基地や周辺の軍用艦船に向かって飛来する中国の中距離ミサイルの迎撃が目的である。日本を守るというよりも米軍とその艦船を守ろうというのだ。

どうしてマスコミは、20年前と言うことが違うやないか、と言わないのであろうか。ウクライナについても同様である。いま欧米のメディアの多くが現地取材に基づく独自の報道を続けているが,日本はどうだろう。ロシアやそれに接近する中国との対決姿勢を強める政権幹部の情報に依存しすぎていないか、両国の現実を客観的に伝えることができているのだろうか。

4、イラクに自衛隊が派兵された時、北海道でも裁判が起こされた(自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟)。元自由民主党の重鎮であった箕輪登さん(衆議院議員(8期)元防衛政務次官)も原告となった。私は、札幌の裁判所で応援弁論を行い、箕輪登さんの訴えを直接聞く機会があった。箕輪登さんは車椅子に乗り、医師に付き添われながらも法廷で絞り出すような声で、なぜ自由民主党の国防族であった自分が裁判まで起こしたのかを訴えた。『自衛隊は、日本の国を守るためにあるはずです。遠くイラクまで行って何をするんですか。』と。この訴えは、現在も通じる。どうして米国と一緒になって、武力で台湾擁護のため戦う米国と一緒になって、戦争するのですか。なぜ日本の自衛隊員が犠牲になるのですか。どうして沖縄の人たちがまたまた犠牲になるのですか、と。強く思う。政権幹部への期待は持てないが、せめて、批判的な姿勢も見せるマスコミであってほしい。この法廷での訴えの二年後、箕輪登さんは旅立たれた(82歳没)。

                               以  上

カテゴリー: お知らせ, 平和 

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