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家族信託のご紹介 (弁護士高橋早苗)

2024-01-10

家族信託のご紹介

                     弁護士 高椅早苗

 

「家族信託」という言葉を聞いたことがありますか?あまりなじみのない言葉かもしれませんが、近年、老後の財産管理の方法の一つとして注目されている方法です。

家族信託とは、老後の生活や介護に必要な資金の管理や処分といった特定の目的に従って、その資産を信頼できる家族に託し管理や処分を任せる仕組みです。財産管理を任せる人と任せられる人との間で「信託契約」を結びます。「家族」と付いていますが家族の範囲に制限はなく家族でなくても大丈夫です。自分の財産を任せられるだけの信頼できる人は通常家族や親族ということで「家族信託」と呼ばれています。

家族信託が用いられる場面は様々ですが、よくある事例をいくつかご紹介します。まず自らが認知症等になって財産管理ができなくなった場合に備えるパターンです。預金や不動産を有している場合、認知症になってしまうと預金は凍結され家族でも引き出せなくなり、不動産の売却や賃貸管理もできなくなってしまいます。このような事態に備え予め子供との間に信託契約を結び、不動産の名義を子供に移転し、預金も信託専用の口座に移転させておきます。このようにしておけば、本人が認知症となっても子供が不動産を売却し現金化して介護施設への入所費用としたり、預金を出金して本人の生活費に当てたりすることができ、間断なく本人の生活の安定を図ることができます。

また、契約者本人のためだけではなく、例えばその子供の生活保障のために利用することもあります。障害等で自立して生活することが困難な子がいる場合、本人が認知症になった場合や本人が死亡した場合の子の生活保障のため、その他の家族や親族との間に信託契約を結ぶ場合です。本人の預金を子の生活費や施設入所費用に使うよう定めておいたり、子亡き後は余った財産を施設に寄付するなどその承継先を指定することもできます。

このように、家族信託は財産管理が本人の判断能力に左右されず途切れることなく行えること、管理者を自由に選べること、柔軟な財産管理が可能であること、遺言では実現できない財産の承継先の指定ができること、本人亡き後の「争族」の防止に資するといったメリットがあります。

他方で、信託契約では身上監護はできなかったり(施設の入所契約をするには本人の後見人にならなければなりません)、相続人間に不公平感を生じたりと万能ではありません。そこで、実際には後見制度(法定後見・任意後見)や遺言、その他の仕組みと併用して用いられることが一般的です。家族信託を中心に据えつつ、本人の置かれた状況や希望に沿って、その他の仕組みも利用することであらゆる事態に備えることができるのです。

超高齢社会となり認知症高齢者も増加しつつある中、自分で自分の財産管理ができなくなってしまった事態に備え、予め準備しておける家族信託を選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?ご本人の状況やご希望をよく聞かせて頂いたうえ、それぞれの方に適した信託契約その他制度の利用をご提案しますので、気になった方はぜひご相談ください。

カテゴリー: お知らせ, 家事 

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