最高裁も認めた!個人請負・個人委託も労働者
最高裁も認めた!!個人請負・個人委託も労働者
弁護士 河村 学
自分は「請負だから」「委託だから」、会社に対しては何も言えないと思っていませんか。
実は、2012年2月21日に出された最高裁判決、そして2013年1月23日に出た東京高裁判決によって、裁判所は、 請負・委託で働く人たちが労働組合を作り、会社と団体交渉を行うことや、ストライキその他の団体行動を行うことを権利として認める重要な判断を行いました。
事案は、音響機器等のビクターの製品を出張修理する業務に従事している就労者が、契約名目としてはビクター子会社と業務委託契約を締結しているとされ、会社から個人業者の扱いを受けていたという事案でした。会社のこのような取扱いのため、会社からの一方的な就労条件の切り下げにも文句がいえず、嫌なら契約を切るという脅しの中で無力だった就労者が、同じように働く就労者と話し合って労働組合を結成し、会社に団体交渉を申し入れたところ、会社は労働者でないののだから交渉には応じないとして、これを拒否したのです。
この事案で、最高裁は、少し前に出ていた別事件の最高裁判決(新国立劇場事件・INAXメンテナンス事件各最高裁判決:平成23年4月12日)と同じく、①会社組織への組み込み、②契約内容の一方的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤指揮監督下の労務提供・時間的場所的拘束、の5つの事情を挙げて、本件の就労者は、特段の事情のない限り、 労働組合法で保護される労働者にあたると判断しました。
契約名目が業務委託であっても請負であっても、労働者かどうかは、働く実態に即して客観的に決めるべきと明言した点で画期的な判断でした。裁判の差し戻しを受けた東京高裁は、本件の就労者には事業者とみられるような特段の事情もみあたらないとし、会社の団交拒否は不当労働行為にあたるとしました。
「雇用の多様化」の名の下に、労働者を保護するさまざまな規制を免れようとする企業が多くなっているなかで、労働者を保護するかどうかは、会社による形式的な定めや取扱いではなく、保護されるべき実態があるかどうかで決めるとする今回の判決は、極めて重要です。
自らに権利があることを知らない人に広げ、働く仲間と手を取り合って、よりよい労働条件を求めていきましょう。