仲立証券争議
1999-10-01
仲立証券争議
弁護士 松本七哉
1、仲立証券は、資本面でも役員人事面でも大阪証券取引所がほぼ完全に支配する、取引所の子会社である。通常の証券会社とは異なり、取引所内にあって、株式等の売買の媒介を業としており、各証券会社が各取引ごとに支払う仲立手数料によって経営を維持してきた。しかし、取引のコンピュータ化が進むなかで、人手を介しての取引がしだいに縮小されていくとともに、証券ビッグバンと呼ばれる証券業界の規制緩和、合理化のなかで、仲立業務自体が不要なものとして排除の対象とされていった。
2、ところが、仲立証券には、大阪証券労働組合に結集する強力な組合があった。そこで、大阪証券取引所は意図的に仲立証券を経営危機に追い込み、強力にリストラを行ったうえで、1999年5月、仲立証券を廃業させ、残った従業員40名を全員解雇させた。このようにして起こったのが仲立証券争議である。解雇の対象となった40名は、全員が大証労組の組合員であり、彼らを北浜の地から放逐するのが取引所のねらいであることは明らかであった。
3、仲立証券自体は清算会社として存続していたが、死に体であり、争議の相手方ははじめから取引所であった。組合員らは、取引所に対して団体交渉を求め、地位確認の訴訟を提起した。従って争点は、団体交渉における使用者性、法人格否認の法理の適否など、使用者概念の拡張にあった。 残念ながら、訴訟等は、最初の団交拒否の事件で、地労委、中労委で勝利命令を勝ち取った以外は、敗訴が連続しているが、争議自体は、取引所の不正事件の追及とも連動させて、現在も意気軒昂に闘われている。
カテゴリー: 労働