弁護人接見妨害国賠訴訟
弁護人となろうとする弁護士が、留置中の被疑者と接見するためを警察署に赴いたところ、警察署内への立入りを阻止して接見を妨害したことが違法とされた事例 弁護士 井上 直行
大阪地方裁判所平成13年2月23日判決(原告:篠原俊一弁護士、被告:大阪府)
大阪地裁は、 「此花警察署の警察官らは、原告が弁護士であり、本件被疑者らの弁護人となろうとする者であることを知りながら、原告からの接見の申出を無視し、庁舎への立入りを拒絶することにより、本件被疑者らと接見を妨害したものと認められる。
なお、前記一1のとおり、弁護人等から接見の申出があっても、現に被疑者を取調中であるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、直ちに接見させなくとも違法ではないが、本件において、仮にそのような必要性があったとしても、およそ原告と応対した警察官らは、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人等と打ち合せることのできるような措置をなんらとっていない。
仮に原告の態度が、被告らの主張するように、名も名乗らず、名刺も出さず、紳士的でなかったとしても、許されるべきことではない。
被告らは、原告が、当初から、庁舎に入っていたとしても、本件被疑者らが取調中であったため、直ちには接見できなかったもので、後刻実現した接見時刻まで待機させざるを得なかったから、此花警察署の措置になんら違法はない旨主張するが、前述した経緯を照らすと、その措置には、接見交通権の重大さに対する配慮が欠けていたというほかなく、違法の誹りは免れない。」と判決した。
この判決は、判決の「事実認定」の中に、関西合同法律事務所の弁護士がたくさん登場しているという点で珍しいです
「原告は、平成10年3月19午後6時35分ころ、本件被疑者らと接見するため、此花警察署に到着した。
その際、同署前には、同署所属の警察官数十名が、同署敷地と歩道の境界辺りに阻止線を張っていた。
原告は、本件被疑者らの支援に駆けつけていた者たちから、本件被疑者らの身柄が庁舎内にあると告げられ、庁舎内に立ち入ろうとした。
そこで、原告は、警察官濵野に対し、弁護士であると名乗り、本件被疑者らに接見するため、来署した旨告げた。
その際、原告は、弁護士バッジを示したが、警察官濵野は、原告が弁護士であることを認めず、「ここは立入り禁止です」「出て行きなさい」と言って、応じなかった。 原告は、同日午後7時過ぎころ、別紙見取図<2>の位置で、目前にいた警察官田仲らに対し、此花警察署の庁舎に入れるよう、自分で判断できないのなら上司に取り次ぐよう要請した。
これに対し、警察官田仲らは、なんの回答もしなかった。
引き続き、原告は、そばにいた警察官濱野らに対し、庁舎に入れるよう説得したが、拒否された。 そのころ、応援を求めた関西合同法律事務所の松本七哉弁護士と井上直行弁護士が、此花警察署前に到着し、庁舎に入った。
同弁護士らは、署内にいた警察官から「立入禁止です。出て行って下さい」と言われたが、弁護人として接見に来たものであるとして、その場に止まった。 同じく関西合同法律事務所の杉島幸生弁護士が、午後7時20分ころ、此花警察署前に到着し、弁護人として接見に来た旨告げ、庁舎に入ろうとしたが、警察官らに阻止され、直ちには入れなかった。」