辺野古への米軍基地建設は許せない
辺野古への米軍基地建設は許せない
弁護士 上 山 勤
基地建設のいま
10月13日、沖縄の翁長知事は、辺野古周辺の公有水面の埋め立て条件を守っていない(サンゴなどを傷つけている)として、埋め立て許可の取消処分を発表した。これに対し、防衛局は行政不服審査の申立をし、結論が出るまでの執行停止の申立を、国土交通大臣に対して行い、大臣はこれを許可した。(本来、これは国民に対して違法な行政行為に対抗するために認められているはずの手段。だから、国は自分で自分を裁くというとてもおかしな構図になってしまった。)
他方で、国は11月17日、あくまで翁長知事が態度を変えない場合に備えて、国が知事に代わって、埋め立て承認の取消の取消ができるようにするため、福岡高等裁判所那覇支部に対して、代執行に向けた行政訴訟を提起した。20年前、当時の大田知事が米軍の為の土地の強制的な取上げに協力しなかったときに、わざわざ法律を作って知事に代わって国が処分できるようにした、あの場面の再来である。国の言い分の柱は二つ。○1辺野古へ移転しなければ、危険な普天間の基地が存続してしまう○2日米関係に不利益が生じる、というものである。
不利益の大きさを考えれば、埋め立ての手続きに多少の問題があったとしても、著しく不当とは言えず翁長知事の取消処分は過去の判例に違反している、というのである。沖縄県としては、国土交通大臣のなした執行停止処分の取消を求めて、「抗告訴訟」(国土交通大臣の処分の取消を求める訴訟)を提起した。「重大な損害を避けるため、緊急の必要性がある」場合は、大臣決定を取り消すことができる。こちらは、政府とは、一応独立した裁判所の判断を求めるものである。しかし、このまま、裁判所の判断に下駄を預けるような状況は危険である。ちなみに、高裁の那覇支部長が最近、交代となった。後任は、千葉の成田の土地収用で農民の主張を切り捨てた裁判官である。
日本の政府はどっちを向いているのか
国が挙げた二つの理由の内、日米関係を阻害するという理由について。オール沖縄の民意を圧倒するほどに日米関係の重視、辺野古への移転は重たい事実なのであろうか。沖縄の基地周辺住民は占領米軍に無理矢理、土地を取り上げられた。最近では、少女暴行事件と軍用ヘリ墜落事件が記憶に新しい。政府はこのような事実を本当に重く受け止めているのだろうか。
他方で、沖縄に駐留する米軍が日本の人民のために軍隊として何かしてくれただろうか。私は知らない。第一、日本が攻撃されたことなど一度もない。だから、米軍は出動していない。尖閣諸島はどうなのか。中国軍が侵攻したことはない。日本も海上保安庁が警察対応しているが、米軍が一度だって出てきて、中国漁船を威嚇したことがあっただろうか。ないのである。他方で、米軍はここを足場にベトナムや中東に侵攻していった。御利益は日本にではなく、米国にあったのである。このような具体的な事実の指摘を政府は決して行わない。一体どっちを向いて政治をしているのだろうか。
今、求められているもの
日本にある米軍基地の7割以上が沖縄に集中している。戦後沖縄だけが米軍の占領下であり続け、30年間犠牲になり続けたのだ。その歴史ゆえに米軍基地が集中をしている。しかし、戦後70年たった今、これをこのまま放置してよいのだろうか。安保関連法案の成立反対運動で名の知られることとなった学生組織「シールズ」が11月15日、小雨の降る東京新宿で「辺野古基地建設に反対する緊急集会」を開いた。専修大学2年生のT君、『ハクサイ、グスヨー ・・・ブルドザーで踏みつぶされて基地ができ、日米安保も地位協定も国会に沖縄の代表は一人もいないまま決められた。 ・・・ゲート前の声に耳を傾けてほしい。一人一人が辺野古を通して本当の民主主義を勝ち取って!』と訴えた。
6月に琉球新報が行った県民の意識調査。53%が基地の沖縄からの撤去を求めている。過半数の人が撤去を望んでいる。
他方で、政府が行ったとされる今年当初の世論調査では、83%の国民が日米安保条約は日本の平和と安全にとって有効である、と感じている。安保条約は抑止力として必要だという意見が多数なのである。であれば、沖縄だけに犠牲を押し付けるのはおかしい。必要な条約だという意識と、しかし自分の近くに基地は嫌だという意識はわがままでありおかしい。米軍基地はいらないというのであれば、抽象的に言い伝えられている「抑止力としての安保」についてもう一度考え直してみる必要があるだろう。