鉄鋼落下の労災事故で損害賠償請求訴訟に勝訴しました
「鉄鋼落下の労災事故で損害賠償請求訴訟に勝訴しました」
弁護士 喜 田 崇 之
【はじめに】
建設現場で鉄鋼が足に落ちて怪我をした事故で、雇用主、現場監督企業等3社に対する損害賠償を認める判決を勝ち取りました。
【事案の概要】
原告Xさんは、建設会社Y1の従業員として、川の改修工事に従事していたところ、鉄骨が右足の指付近に落下する事故に遭いました。Xさんは、作業時に安全靴を履いておらず、右第1、第2趾末節骨解放骨折等の傷害を負いました。その後、労災申請をしたところ、11級8号が認定されました。
Xさんは、Y1社の他、改修工事の受注会社であり現場を指揮するY2社、Y2社から本件工事を下請し、Xさんに様々な作業指示をしていたY3社に対して、損害賠償請求訴訟を提起しました。
【判決内容】
判決は、「(会社は)常日頃、従業員に対して、安全靴の着用を指導していたとしても、従業員が足に危険を及ぶ可能性のある作業現場で安全靴を着用していない場合は、当然従業員に安全靴を着用させるべき義務があるといえるから、本件事故の発生について、原告に安全靴を履かせるべき注意義務違反が認められる」と述べ、本件でY1社の注意義務違反を認めました。
また、同様に、雇用先ではないY2社と、Y3社についても、「Xとの間に特別な社会的接触の関係に入ったもので、信義則上、Xに対して安全配慮義務を負う」と述べ、Y2社、Y3社の責任も認めました。
なお、本件では、一審判決後、Xさんと会社との間で、判決を前提とした和解が成立しました。
【最後に】
Xさんは、相談にお見えになった当初、会社に対する損害賠償ができるかどうか半信半疑の状態でした。事故態様に関する客観的な証拠に乏しく、また、Y1~Y3社の現場作業員が、Xさんが認識する真実の事故態様と異なる証言をすることがほぼ間違いない状況だったからです。また、Xさんは、安全靴を履いていなかったことについて自分の落ち度もあるのではないかという思いもありました。
労災事件において、原告側に客観的証拠が乏しいケースや、会社側が真実と異なる事故態様を主張してくることはよくあることです。限られた証拠の中で、丁寧に労働安全衛生法、同施行令等違反の法論理の主張や、ときには裁判所を活用して間接事実を積み重ねていくことが重要になります。そして、過去の判例や弁護士の持つ経験則・技量等を十分に活用し、原告の請求の正当性を訴えていくことになります。
労災事件は高い専門性が要求される分野の一つだと思います。ぜひ、一度、ご相談下さい。