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[民事]に関する記事

第2次下請従業員の転落事故と元請の責任【判例紹介】

2019-10-26

第2次下請従業員の転落事故と元請の責任について、下級審の裁判例を紹介します。

東京高裁平成30年4月26日判決(労働判例1206号46頁)です。

事例は、都市再生機構(UR)の団地内における樹木伐採剪定を請け負った第2次下請造園業者の従業員が樹木から転落した労災事故で、従業員が、直接の雇用関係のない元請会社(URの関連会社)と第1次下請業者に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求した事件です。

東京高裁判決は、第1審判決を覆して、元請会社(URの関連会社)の安全配慮義務違反と第1次下請業者の安全配慮義務違反を認めました。

「元請会社は第1次下請業者に対し、個別の工事に関して安全指示書のやり取りや安全衛生の手引の交付によって、安全帯(一丁掛け)の着用、使用に関する指示を具体的に行い、かつ週2回程度訪れて遵守状況の確認を行っていたものであり、第1次下請業者は、この指示に基づき、第2次下請業者に対し、同様の具体的指示を行っていたものであって、この指示は、第2次下請業者を通じてその従業員に対しても及んでいたことからすれば元請会社と第2次下請業者の従業員との間には、特別な社会的接触の関係を肯定するに足りる指揮監督関係があったということができる。」「本件高所作業においては、安全帯、取り分け二丁掛けの安全帯の着用とその徹底が求められるべきところ、元請会社は、安全帯は一丁掛けのものでも安全確保が十分であるとの誤った認識の下に、一丁掛け安全帯の使用の徹底を指示していたのであるから、安全配慮義務違反がある」

第2次下請業者は、小規模零細企業が多く資力に乏しくて、被災した労働者が損害賠償請求をしても、損害賠償金を支払う能力がないとか、多額の賠償で破産するおそれもあり、損害賠償金を得られない危険が大きいです。そのため 直接の雇用関係にある第2次下請業者の資力に不安があるときには、元請会社や第1次下請業者に対して、損害賠償請求がすることになります。

最高裁判例によれば、安全配慮義務は、特別な社会的接触の関係に入った当事者間において信義則上認められるものとされています。この特別な社会的接触の関係があったか否かについては、下請業者の労働者が元請会社の管理する設備工具などを使っていたか、下請業者の労働者が事実上元請会社の指揮監督を受けて働いていたか、下請業者の労働者の作業内容と元請会社の労働者の作業内容との類似性、といった事情に着目して判断することになります。

東京高裁の判決では、少し緩やかに、特別な社会的接触の関係を肯定しており、労働者によって有利な判断といえます。

 

親による要望と教員への不法行為【判例紹介】

2019-08-11

親による要望と教員への不法行為について、下級審の裁判例を紹介します。

東京地裁平成29年6月26日判決(判例タイムズ1461号243頁)です

事例は、特別支援学校高等部の教員であった原告が、生徒の母親である被告が頻繁に行った学校管理職への要望により、精神的に追い詰められ心身に不調をきたし、休職を経て退職を余儀なくされたと主張して、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事件です。

認定事実から見ると、母親は、生徒へ一人通学の指導を実施すること、原告を生徒の指導から外すこと、生徒の通知表から原告の名前を削除することを要望したり、予告なく原告の授業を見学したりを繰り返した。

結論として、東京地裁は、原告の請求を棄却した。

その理由は、原則論として、「学校教育においては、学校、教員及び父母のそれぞれが、子どもの教育の結果はもとより、教員の指導方法を含めた教育の内容及び方法等につき関心を抱くのであって、それぞれの立場から教育の内容及び方法等の決定、実施に対し意見を述べ合いながら協力していくことが必要なものであるから、父母らが学級担任の自己の子どもに対する指導方法について要望を出し、あるいは批判することは許されることであって、その内容が教員としての能力や指導方法に関する批判に及ぶことがあったとしても、直ちに当該教員に対する不法行為を構成するような違法性があるということはできない。」

本件では、「全証拠をみても、被告が原告に対して生徒の指導方法について要望を出した際に原告に対する人格攻撃等があったとか、原告の授業等を見学した際に授業の妨害をおこなった等の事実を認めるべき証拠はない。被告が校長らに対し生徒の指導から原告を外すこと、生徒の通知表から原告の名前を削除すること及びクラスの担任から原告を外すことなどを要望したことについても、被告は直接原告を糾弾等したわけではなく、事柄についての判断は学校長ら管理職に委ねられており、原告を学校から排除することを違法に要望したものと評価することはできない。」と判断した。

ここから、推論すると、要望であっても教員に対する人格攻撃を含むとか、授業の見学であっても授業妨害に及ぶような場合には、親の教員への不法行為になるといえるでしょう。

 

 

相続財産に関する情報と個人情報【判例紹介】

2019-03-25

相続財産に関する情報と個人情報について、最高裁判所が初判例を示しました。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/528/088528_hanrei.pdf

事案の概要

個人情報保護法は、事業者が収集し保有する個人情報について、適正な取り扱いを確保する観点から、個人本人が自分の情報をチェックできるようにして、保有個人データの開示請求権、訂正請求権、利用停止請求権を規定しています。本件は、個人の死亡後に、その相続人が個人の相続財産に関する情報を個人情報保護法に基づき保有個人データの開示請求を行った事案です。

Aは、平成15年8月に、Y銀行で普通預金口座を開設し、銀行に印鑑届出書を提出した。印鑑届出書には、Aの自筆による住所、氏名、生年月日の記載と銀行印の印影がある。Aは、平成16年1月に死亡し、平成15年8月付の自筆証書遺言により、本件預金口座の預金のうち1億円だけを相続人Xに相続させた。相続人Xは、自筆証書遺言が偽造されたものではないかと疑念を抱き、それを確認する資料とするため、Y銀行に対し、Aが提出した印鑑届出書の写しの開示を求める訴訟を提起した。

最高裁の判断

個人情報保護法が,保有個人データの開示,訂正及び利用停止等を個人情報取扱事業者に対して請求することができる旨を定めているのは,個人情報取扱事業者による個人情報の適正な取扱いを確保し,個人の権利利益を保護する目的を達成しようとした趣旨と解される。このような個人情報保護法の趣旨目的に照らせば,ある情報が特定の個人に関するものとして個人情報保護法2条1項の個人情報に該当するかどうかは,当該情報の内容と当該個人との関係を個別に検討して判断すべきである。

したがって,相続財産についての情報が被相続人に関するものとして生前に個人情報に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人等に関するものとして個人情報に当たるということはできない。

本件印鑑届出書にある銀行印の印影は,AがY銀行との銀行取引において使用するものとして届け出られたものであった,XがAの相続人等として本件預金口座に係る預金契約上の地位を取得したからといって,当該印影は,XとY銀行との銀行取引において使用されることとなるものではない。また,本件印鑑届出書にあるその他の記載も,XとY銀行との銀行取引に関するものとはいえない。その他,本件印鑑届出書の情報の内容がXに関するものであるというべき事情はうかがわれないから,上記情報がXに関するものとして個人情報に当たるということはできない。

 

解決事例:保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決した

2018-11-12

「保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決をしました」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

交通事故により右肩鍵盤断裂等の傷害を負った原告Xさん(事故当時44歳の男性)は、自賠責保険で後遺障害等級(10級10号)の認定を受けたものの、Xさんが運送会社の経営者であり、役員報酬を受け続けていることを理由に逸失利益が存在しないと保険会社から主張されていた件で、逸失利益が発生していることを前提とする和解を勝ち取りました。

【事案の概要】

Xさんは、2016年5月、大型貨物自動車に乗って赤信号で停止中、普通自動車に後部から追突され、右肩鍵盤断裂等の重症を負いました。Xさんは、治療を続け、自賠責の申請をしたところ、10級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が認定されました。

Xさんは、従業員が約20名弱の運送会社(一部製造業も営んでいる)の代表取締役であり、一定の役員報酬を受けていました。保険会社は、事故後も、役員報酬に減額がないことを理由として、逸失利益の喪失がない、つまり、後遺障害によって将来にわたる収入減額が起きないと主張し、逸失利益の損害を一切支払わない旨を主張しました。

そこで、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2017年11月、損害賠償請求訴訟を提起しました。

【裁判の進行】

我々は、Xさんは荷物の積み下ろしを含むトラック運送業務の実務に従事しており、後遺障害によって業務に大きな影響が出ていることからすれば、Xさんが一定の役員報酬をもらっているとしても、それは労務対価性のあるものであって、逸失利益が発生する旨を主張・立証しました。実際に、Xさんの会社の経営状態は、交通事故発生後、Xさんが十分に業務に従事することができないこともあり、やや悪化していました。

これに対し被告側は、事故後も役員報酬の減額がないことを理由として、逸失利益は発生しないという主張を維持しました。

そして、ある程度の主張・立証が尽くされた後、2018年10月、裁判所から和解案が文書で提案されました。

【裁判所の和解案】

裁判所の和解案には、Xさん自身が荷物の積み下ろし等も含むトラック運転業務に従事していることや、当該具体的な業務内容と後遺障害の内容・程度に照らせば、業務への影響が出ていることや、実際に会社の売上にも影響していること等に照らして、逸失利益を認めることが相当であると明確に述べました。その上で、27%の労働能力喪失と、67歳までの逸失利益を具体的な金額で算定しました。

結局、保険会社も裁判所の和解案を受け入れ、訴訟提起前の交渉段階では考えられなかった水準での和解が成立しました。

【最後に】

Xさんが、訴訟提起前に保険会社から提案された金額は、慰謝料等のわずかな金額でした。しかし、訴訟提起し、後遺障害の内容・程度、Xさんの業務内容等との関係、その他の事情等から、役員報酬が維持されているとしても逸失利益が発生していると立証することに成功し、裁判所が我々の主張を全面的に採用してくれました。

このように、保険会社の主張・考え方が、裁判所で維持されるとは必ずしも限りません。法的観点から保険会社の主張が通るかどうかを見極めることが大切です。

交通事故の示談交渉でお困りの方は、ぜひ、一度、ご相談ください。

自賠責に対する被害者請求と労災の求償が競合する場合【判例紹介】

2018-10-03

自賠責に対する被害者請求と労災からの求償とが競合する場合(最高裁平成30年9月27日判決)

判決文は
裁判所HP
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/011/088011_hanrei.pdf
で公開されています

加害者が任意保険に入っておらず、業務上災害である交通事故のケースです。
被害者は、労災保険給付を申請できますし(その場合に後日、国が加害者に対して第三者行為の求償をすることになります)、足りない分を自賠責保険会社に被害者請求することができます。

自賠責の保険金額は、傷害も後遺障害も上限が決まっていますので、上限の決まった金額を、被害者請求と労災による求償とどっちが優先するかという問題です。

判決は、被害者請求の金額と労災の求償の金額とで比例配分するのではなく、被害者優先であるというのが結論です。

判決要旨
被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され、被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。

 

 

 

交通事故のとき弁護士に依頼するメリット

2018-06-14

交通事故のとき弁護士に依頼することで得られるメリット

弁護士佐々木正博

2016年中の交通事故発生件数は49万9201件,1日あたり1368件も発生していますが多くの方が初めての経験ということになるのではないでしょうか。
そこで,弁護士に相談・依頼するメリットについてお伝えしたいと思います。
①まずは賠償額増額の可能性が高いということです。特に慰謝料については低額な保険会社独自の基準で提示してくるところ,弁護士が入れば,それより高額な裁判所の基準で話し合いを進めていくので賠償額が増額される可能性が高くなります。気付かなかった賠償の項目についても漏れなく請求することもできます。

②大きな争いとなることが多い過失割合についても,こちらの言い分をしっかりと主張し,議論を尽くしていくことができます。

③示談交渉への対応やたくさんの面倒な手続きから解放され,また,事故で心身ともに辛い思いをされている依頼者の方の精神的支えになることができます。損害賠償を算定するにあたり,その前提として,民法・自賠法・道路交通法などの法律知識が必要なのはもちろんですが,さらには,医学的知識や自動車工学などの深く幅広い科学的知識が必要です。今後の見通しを立てていくためには,幅広い専門知識が必要となってきます。

弁護士に依頼することで費用はかかりますが,多くの保険に弁護士費用特約が付いていますし,これからかかる費用の見積もりもご依頼の前には明確にお伝えいたしますので安心です。関西合同法律事務所には交通事故案件に強い経験豊富な弁護士が多数在籍しており,日々親身にご相談に応じております。

まずはお気軽にご相談下さい。

自賠責保険で認定された後遺障害等級の水準以上で和解しました

2018-02-19

「自賠責保険で認定された後遺障害等級の水準以上で和解しました」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

交通事故により恥骨骨折等の傷害を負った原告Xさんが、訴訟提起の結果、自賠責保険で認定された後遺障害等級(14級10号)以上の水準の和解を勝ち取りました。

【事案の概要】

原告Xさんは、2015年6月、自転車に乗車中に、普通自動車と衝突する交通事故に遭われ、恥骨骨折等の傷害を負いました。Xさんは、治療を続け、自賠責の申請をしたところ、14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認定されるに留まりました。

14級9号では、労働能力が5%しか喪失していないと評価され、喪失期間も2年~5年とされることが多いのですが、Xさんの生活状況や、レントゲン写真の状況から判断すると、より大きな労働能力の喪失が考えられました。また、相手方側(保険会社)は、事故態様について、Xさんの側にも一定の落ち度がある旨を主張してきました。

そのため、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2016年12月、損害賠償請求訴訟を提起しました。

【裁判の進行】

被告は、裁判で、Xさんにも本件事故の落ち度があり、過失相殺の主張をしました。また、Xさんの骨折の程度が軽いことを理由に、労働能力の喪失はせいぜい5%で、3年程度しか続かない主張をしました。

原告側で、医師の意見書や画像データ等により、Xさんに股関節の可動域制限が生じていることや、骨折部位が変形治癒されていること等を立証し、より大きな労働能力の喪失を主張・立証しました。被告側も、医師の意見書を提出し、医学的にどちらの主張が正しいかが争点となりました。過失相殺についても、事故態様を詳細に主張・立証し、Xさんに落ち度がないことを立証しました。

そして、ある程度の主張・立証が尽くされた後、2017年12月、裁判所から和解案が文書で提案されました。

【裁判所の和解案】

裁判所の和解案は、まず、Xさんの過失割合がゼロであることを前提としました。

また、労働能力の喪失割合は14%であると判断することを明らかにし(後遺障害等級12級に相当します。)、喪失期間も被告の主張を一蹴しました。結局、裁判所の和解案によって、訴訟提起前の交渉段階の水準を大きく超える和解が成立しました。

【最後に】

裁判所の和解案は、自賠責保険で認定された後遺障害等級の評価を超えて、労働能力の喪失を前提とした水準であり、本件では十分評価できるものでした。また、過失相殺についても、Xさんの過失が「ゼロ」であることを前提にしました。過失相殺は、和解の席では、ややもすると譲歩を迫られることが多いのですが、しっかりと「ゼロ」であることを明記させたことも大きな点でした。(例え、5%や10%の過失相殺でも、金額にすると大きな金額になります。)

自賠責保険の後遺障害認定を覆す判決・和解を勝ち取ることは、実務上、容易なことではありませんが、本件では、医学的観点からの主張、立証が成功した事例でした。

交通事故の示談交渉でお困りの方は、ぜひ、一度、ご相談ください。

建築瑕疵が争われた請負代金請求訴訟で勝訴しました

2017-10-13

「建築瑕疵が争われた請負代金請求訴訟で勝訴しました」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

X社は、あるマンション建設工事をY社から請け負いました。

X社とY社は、請負契約を締結し、工事の進捗状況に従って請負代金が支払われていました。しかし、Y社は、請負工事が当初の予定より遅れたことや、完成した建物に建築基準法違反等の瑕疵があること等を理由として、建物完成後に支払うべき最後の支払いを拒絶しました。

そこで、弁護士喜田がX社の代理人に就任し、Y社に対して損害賠償請求訴訟を提訴しました(実際には、その他の会社も裁判に参加していましたが、ここでは省略します)。

【事案の概要】

我々は、工事完成が若干遅れたことは、Y社側の事情によるものであり、X社に落ち度がないこと、一部建築基準法違反になることはY社側の要望であり、瑕疵に該当しないこと等を、客観的な図面、現場写真、工事日報等から、主張・立証しました。

2016年10月、大阪地裁は、X社の要求を認める判決を下しました。工事完成が若干遅れたことについてX社の責任を認めず、また、建築基準法違反もY社側の要望に沿ったものであることを明確に述べ、その違反の程度も軽微であることから公序良俗に反するものではない旨を判示しました。

全面的なX社の勝利判決でした。本件は、控訴されましたが、最終的に大阪高等裁判所で和解の解決がなされました。

【最後に】

建築紛争において、そもそも契約書等の書面が存在しておらず、いくらの請負代金で合意したのか立証することすら容易ではない事例はたくさん見られます。また、現場で、工事の変更・追加の指示がなされ、そのような変更・追加に関する客観的な資料に乏しい事例も数多く見られます。また、建物の瑕疵があるか否かをめぐって大きな争いになる事例ももちろん多いです。本件では、建築基準法違反という一見すると明らかな瑕疵が存在しているようでしたが、それがY社の要請によるものを立証して瑕疵を否定するという比較的珍しい勝訴事例でした。

建築紛争の分野でも、やはり専門的なノウハウと技術が求められます。お困りの際は、ぜひ、一度、ご相談下さい。

交通事故により大きな手術痕が残った事例で慰謝料増額で和解成立

2017-05-18

「交通事故により大きな手術痕が残った事例で慰謝料増額で和解成立」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

Xさん(当時76歳、男性)が自転車で走行中、Y氏が運転する自転車と衝突して交通事故に遭い、皮膚が壊死し、植被手術等により右太もも等に大きな手術痕が残ったケースで、慰謝料等の損害賠償請求訴訟を提起したところ、和解解決を勝ち取りました。

【事案の概要】

Xさんは、2015年11月、自宅近くの道路を自転車で走行中、Y氏が勤務中に運転する自転車と交通事故に遭われました。

Xさんは、右太ももを怪我し、皮膚が壊死したため、お腹の皮膚から移植手術を受けなければなりませんでした。手術後も、右太ももには大きな手術痕が残りました。

Y氏側は、単純に入通院期間に応じた慰謝料の提案をしましたが、大きな手術痕が残ったことに対する慰謝料の支払いの提案はありませんでした。

そこで、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2014年11月、Y氏及びY氏の勤務先の会社を相手(Y氏の勤務中の事故であったため。)に損害賠償請求訴訟を提起しました。

【裁判の進行】

我々は、Xさんの手術痕の大きさ等から、後遺障害等級14級5号「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」に該当することを、医療記録等から主張・立証し、単に入通院を強いられたことに対する慰謝料だけでなく、このような後遺障害が残ったことに対する慰謝料等の請求を求めました。

そうしたところ、裁判所から、当該手術痕についても慰謝料として計算した上での和解の勧告がなされ、Xさん側の主張を十分に汲んだ内容の和解が成立しました。

【最後に】

最終的に、当初のY氏側が提案した示談案より大きな金額で和解解決をすることができました。やはり、適切な示談金額を見極めるには、専門家の意見はどうしても必要不可欠であると思います。

交通事故に遭われた方は、ぜひ、一度ご相談頂ければと思います。

交通事故と被害者死亡の因果関係が争われた訴訟で和解しました

2017-03-24

「交通事故と被害者死亡の因果関係が争われた訴訟で和解しました」

弁護士 喜 田  崇 之

【はじめに】

自転車に乗って交通事故に遭って頭を打った男性(Xさん、当時63歳)が、事故から38日後、自宅浴槽で溺死した件で、交通事故と死亡との間に相当因果関係があることを前提とする和解を勝ち取りました。

【事案の概要】

Xさんは、平成23年2月末、自転車に乗車中に、普通自動車に引かれる交通事故に遭われ、地面に頭を打ちました。Xさんは、事故後も自転車を運転して職場に向かいました。

Xさんは、翌日、念のため病院に行きましたが頭部に明らかな異常は見つかりませんでした。Xさんは、その後も、週に3日の仕事を続けながら経過観察をしていましたが、事故から約2週間後、硬膜下に水腫ないし血腫が確認されました。さらに約2週間後、その水腫ないし血腫が大きくなり、このままだと手術をして水腫ないし血腫を除去しなければならない状態(慢性硬膜下血腫)であると医師から言われていた矢先、自宅の浴室で溺死しているところを発見されました。検死の結果、浴室内で意識を消失したため、溺死したと判断されました。

自賠責保険は、本件事故とXさんの死亡には法的な因果関係がないと判断し、任意の保険会社も同様に判断したため、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2016年12月、損害賠償請求訴訟を提起しました。

【大阪地裁での審理】

本件の争点は、風呂場での意識消失発作が発生したことと本件事故との因果関係が法的に認められるかでした。Xさんには慢性硬膜下血腫、水腫がありましたが、検死結果報告書では、血腫量が極めて少なく記載されていました。被告側は、慢性硬膜下血腫で意識消失発作が起こること自体珍しい上に、血腫量が極めて少ない本件では、これらが原因で意識消失発作が起こることは考えられないと主張しました(また、これを後押しする医師の意見書も提出されました。)。

確かに、どの医学書を読んでも、医師に聞いても、検死結果報告書記載の血腫量で意識消失が起こりうると導き出すことは困難でした。一審段階で、実際に検死をした医師が証人として証言しましたが、証人は検死結果が全てである旨を証言するのみでした。

結局、一審判決は、本件事故と意識消失発作との関係、ひいては死亡との因果関係が全て否定される判決が下されました。Xさんのご遺族はすぐに控訴しました。

【大阪高裁での審理】

控訴審に入り、もう一度膨大な記録を精査していると、検死結果報告書の中にあった大量の写真の中から、脳の表面に黒ずんだ血の塊がこびりついているものが見つかり、これが、急性硬膜下血腫の際に見られる所見であることがわかってきました。また、病院に通っていた当時に撮影されたレントゲン画像の状況から、血腫量が検死結果報告書記載の量より多いということが言えるのではないか、検死結果報告の記載が誤りではないかということが浮かび上がってきました。

つまり、Xさんは、慢性硬膜下血腫の量が増大していた中で、亡くなる直前、何等かの事情で慢性硬膜下血腫が急性増悪した(急性出血があった。)ため、意識消失発作を起こしたのではないかということが法的に認められるのではないか。これらの発見を主張書面にまとめ、医師に意見書とともに裁判所に提出しました。

裁判所は、この論点を判断するため、中立の第三者の専門委員(脳神経外科の医師)に判断を仰ぐことを決定しました。そうしたところ、当該専門委員も、我々の主張と同様、検死結果の少ない血腫量の記載に疑問を呈し、黒ずんだ血の塊を根拠として、慢性硬膜下血腫が何等かの事情により急性増悪したため、意識を失う病態に至った可能性が高いことを指摘しました。

専門委員の意見を踏まえて、高等裁判所は、死亡との因果関係があることを前提とした和解案を文書で提案しました。最終的には、裁判所の和解案に沿って和解が成立しました。

【最後に】

何の利害関係のない死体検案書に書かれた記載に誤りがあることなど、当初は全く考えもしませんでした。しかし、最終的にはその記載が誤りであることに気づき、裁判所や専門委員にも理解してもらうことができました。固定観念を捨てて記録を検討することの重要性を思い知らされました。

医学的に非常に難解な事件でしたが、遺族の方が最後まで諦めずに戦い続けたことが、最終的な和解につながったと思います。

最後になりますが、亡くなられたXさんのご冥福をお祈り申し上げます。

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