[消費者]に関する記事
情報商材被害について(弁護士須井康雄)
【情報商材被害について】
弁護士 須 井 康 雄
副業で簡単に稼げるという広告をみて高額のクレジット契約をしてしまったら
【質問】インターネットで「誰でも簡単に稼げます」という広告をみて、業者に連絡したら、クレジットカードで200万円程度のよく分からない契約をすることになったのですが、簡単なノウハウが書かれた10頁くらいの冊子と中古のパソコンが届いただけで、ほったらかしです。業者に電話すると、ノウハウは送ったから、あとは自分でするしかないと言われました。納得がいきません。
【回答】最近、副業で簡単に儲けられるということをうたい、高額の契約をさせる事例が増えています。
「誰でも簡単に稼げます」という広告は、将来における変動が不確実な事項につき断定的な判断を提供するものといえ(断定的判断の提供、消費者契約法4条1項2号)、契約の申込を取り消すことができます。この場合、契約から5年以内かつ誤認したことを知った時から1年以内に取り消す必要があります。
また、通信販売はクーリングオフが適用されないとされていますが、契約内容がなんらかの「商品」の場合、返品できないといった特約がない限り、商品を受け取ってから8日以内に、理由を問わず、契約の申込みの撤回や契約を解除できます(特定商取引法15条の3)。ただし、返品費用は購入者の負担です。
特定商取引法では、①返品の可否、②返品の条件、③返品する場合の送料負担の有無を広告や申し込みの最終確認画面に表示しなければならないとされており、表示されていれば、その特約に従うことになりますが、表示されていなければ、申し込みから8日以内に撤回や解除ができます。
クレジット契約の内容をよく見ると、ノウハウが書かれた「冊子」の売買などとされていることがありますので、この場合には、返品による申込みの撤回等を主張できます。
広告やクレジット契約の内容が紛争解決にとって重要ですので、インターネットやメッセージアプリの画面を印刷したり、スクリーンショットを保存しておいてください。
また、購入したことを後悔する気持ちが生じた場合、法的に認められるかはどうかともかく、取り急ぎ「申込みを撤回又は契約を解除します」とメールやメッセージアプリで送信し、話し合いがつかない場合は、消費者センターや弁護士にご相談ください。
悪徳サブスクにご用心 (弁護士佐々木正博)
悪徳サブスクにご用心
弁護士 佐々木 正博
私の知人(Aさん)が実体験した事件をご紹介します。
Aさんは、あるファッションレンタルサービスを利用していました。
月額料金(だいたい5000円~2万円程度が多いです)を支払うと、毎月、業者が選んだ洋服が一定枚数送られてきて、気に入ったものは着て、約束の期限が来たらクリーニング不要で返却するというものです。服(ファッション)のサブスクリプションサービス(サブスク)とも言われます(※業者によって料金・システムに相違はあります)。
Aさんは、1年程度利用を続けていましたが、ある日、返却した服が破損していたとして、1万0450円が勝手にカード決済されていたのです。実は、その服は少しの時間一度しか着ておらず、しかも、状態を確認してから返却したので、あり得ないものでした。
破損の内容について業者に説明を求めても何ら詳細な説明もなく、破損個所の写真なども一切示されませんでした。
また、業者のメールアドレスにメールを送信しても返信まで最大4週間かかると言われ、途方に暮れてしまいました。そこで諦めないAさんは、Webサイトに表記されている会社所在地に内容証明郵便も送りましたが、企業なのになぜか不在で別の郵便局に転送されるし…。何度も粘り強く申し入れを行ない、ようやく返金を受けることができましたが、それまでにかけた労力や内容証明郵便代など、大きな負担を強いられる結果となってしまいました。
この騒ぎの際中、インターネットを検索してみると、同様の被害(破損させた覚えが無いのにもかかわらず高額の修理代が勝手に引き落とされていた、とか、解約した途端に、かなり前の身に覚えのない修理代が突如引き落とされていた)や、それ以外の不自然な事例も無数に報告されていました。そういった被害を受けた方々のSNSグループもいくつか立ち上がっているようで、私もグループに入ってみました。現在もたくさんの事例が挙げられています。
サブスクリプションサービスは、色々な分野に広がっています。サブスクリプションサービスは、とても便利なサービスで、コストパフォーマンスの良さが魅力的です。しかし、多くはクレジットカード決済の場合が多く、知らない間に身に覚えのない支払いがされてしまう危険もあります。
真面目に運営されているサブスクリプションサービスが殆どだと信じていますが、このような架空請求と言わざるを得ないような業者が存在するのは事実です。いわゆる比較サイトでは、いまだに問題の業者がおすすめ上位にランクされています。皆様も、サブスクリプションサービスを利用される際には、色々な情報源から慎重に検討されることを強くお勧めします。
ブラック奨学金にご用心
ブラック奨学金にご用心
弁護士 清水亮宏
現在、高校や大学の教育費の負担の問題が注目を集めていますが、この問題と切り離せないのが奨学金の問題です。
日本の奨学金の大半は貸与型です。これは海外でいう教育ローンを指し、実質的には借金です。現在、大学生の4割近くが貸与型奨学金を日本学生支援機構(JASSO)から借りている状況にありますが、返還に困っている社会人・保証人の声がニュースやSNS等で取り上げられています。
今や、非正社員が4割を占め、正社員であっても低賃金で長時間働かせるブラック企業に入社してしまうケースが見られます。返済の余裕がない若者に対し、奨学金の返済が重くのしかかり、結婚・出産・生活に影響が出てしまっているようです。これは、少子高齢化にもつながる問題です。
また、保証人への請求に関するトラブルもおきています。現在、奨学金を借りる際には、機関保証(保証機関が連帯保証する制度) に加入するか、人的保証(連帯保証人と保証人をそれぞれ選任すること)するかを求められるます。ここで保証人として選任されるのは、親やおじ・おば・兄弟などの親族です。本人の事情で返済が難しい場合には、保証人に請求がいくことになりますが、返済額が数百万円になっていることも珍しくありません。突然親族に数百万円の請求がいき、自己破産を選択せざるを得ないケース、親族関係に亀裂が生じてしまうケースが出てきています。
奨学金は若者の将来のための制度のはずです。若者が卒業後に借金地獄に苦しまないように、保証人との間でトラブルがないように、給付型の奨学金の拡大についてもっと議論すべき時期に来ているのではないでしょうか。
奨学金については、返還期限猶予、減額返還、返還免除などの制度がありますし、時効などの権利を主張することで、支払額を減らすことができるケースもあります。返済に困っている方は、一度、法律の専門家(特に奨学金に詳しい弁護士)に相談することをおすすめいたします。
シンポジウム『カジノ実施法の制定阻止に向けて』
シンポジウム『カジノ実施法の制定阻止に向けて』開催
日時:9月16日(土)13:30-16:00
場所:大阪弁護士会館 会館2階201・202会議室(大阪市北区西天満1-12-5)
報告:IRカジノの内容と問題点 吉田 哲也氏(兵庫県弁護士会 弁護士)
大阪でのカジノ誘致に関する問題点 桜田 照雄氏(阪南大学教授)
政府によるとりまとめ状況 大阪弁護士会消費者保護委員会委員
参加費:無料
主催:大阪弁護士会
家主から家賃の値上げを求められたら
Q.家主から家賃の値上げを求められています。どの対応したらよいでしょうか
A. 借地借家法は、建物の賃貸借に伴う賃料の増額、減額について、「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって建物の借賃の増減を請求することができる。」と定めています(借地借家法32条1項)。
家賃値上げの理由は、⓵固定資産税や都市計画税等の負担、⓶土地や建物価格の増減、⓷近隣の同種建物の賃料の増減となっていますので、家賃値上げの請求を受けた場合、このような事情があるのかどうかを確認する必要があります。
家主が年月がたったからという理由だけで値上げを請求することもありますが、前の合意家賃が高いと高めに推移しがちですし、逆に前が安かったときは低めに推移することになりがちです。ですから、その期間に、何か事情が変化したのか確認する必要があります。
これらの事情を確認した上で値上げが正当と判断した場合は、値上げに合意をすることになります。値上げが高すぎるし、事情もないし、応じられない場合は、値上げを拒否し、とりあえず「相当と認める賃料」を支払うことになります。よくあるのは、従来通りの家賃の支払いを続け、増額の裁判が確定したときに差額と利息を支払います。
当事者で話し合いがつかない時は、裁判所の調停に進むことになります。
弁護士 井上直行