解決事例:保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決した
「保険会社から否定された逸失利益を勝ち取る和解解決をしました」
弁護士 喜 田 崇 之
【はじめに】
交通事故により右肩鍵盤断裂等の傷害を負った原告Xさん(事故当時44歳の男性)は、自賠責保険で後遺障害等級(10級10号)の認定を受けたものの、Xさんが運送会社の経営者であり、役員報酬を受け続けていることを理由に逸失利益が存在しないと保険会社から主張されていた件で、逸失利益が発生していることを前提とする和解を勝ち取りました。
【事案の概要】
Xさんは、2016年5月、大型貨物自動車に乗って赤信号で停止中、普通自動車に後部から追突され、右肩鍵盤断裂等の重症を負いました。Xさんは、治療を続け、自賠責の申請をしたところ、10級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)が認定されました。
Xさんは、従業員が約20名弱の運送会社(一部製造業も営んでいる)の代表取締役であり、一定の役員報酬を受けていました。保険会社は、事故後も、役員報酬に減額がないことを理由として、逸失利益の喪失がない、つまり、後遺障害によって将来にわたる収入減額が起きないと主張し、逸失利益の損害を一切支払わない旨を主張しました。
そこで、弁護士喜田がXさんの代理人に就任し、2017年11月、損害賠償請求訴訟を提起しました。
【裁判の進行】
我々は、Xさんは荷物の積み下ろしを含むトラック運送業務の実務に従事しており、後遺障害によって業務に大きな影響が出ていることからすれば、Xさんが一定の役員報酬をもらっているとしても、それは労務対価性のあるものであって、逸失利益が発生する旨を主張・立証しました。実際に、Xさんの会社の経営状態は、交通事故発生後、Xさんが十分に業務に従事することができないこともあり、やや悪化していました。
これに対し被告側は、事故後も役員報酬の減額がないことを理由として、逸失利益は発生しないという主張を維持しました。
そして、ある程度の主張・立証が尽くされた後、2018年10月、裁判所から和解案が文書で提案されました。
【裁判所の和解案】
裁判所の和解案には、Xさん自身が荷物の積み下ろし等も含むトラック運転業務に従事していることや、当該具体的な業務内容と後遺障害の内容・程度に照らせば、業務への影響が出ていることや、実際に会社の売上にも影響していること等に照らして、逸失利益を認めることが相当であると明確に述べました。その上で、27%の労働能力喪失と、67歳までの逸失利益を具体的な金額で算定しました。
結局、保険会社も裁判所の和解案を受け入れ、訴訟提起前の交渉段階では考えられなかった水準での和解が成立しました。
【最後に】
Xさんが、訴訟提起前に保険会社から提案された金額は、慰謝料等のわずかな金額でした。しかし、訴訟提起し、後遺障害の内容・程度、Xさんの業務内容等との関係、その他の事情等から、役員報酬が維持されているとしても逸失利益が発生していると立証することに成功し、裁判所が我々の主張を全面的に採用してくれました。
このように、保険会社の主張・考え方が、裁判所で維持されるとは必ずしも限りません。法的観点から保険会社の主張が通るかどうかを見極めることが大切です。
交通事故の示談交渉でお困りの方は、ぜひ、一度、ご相談ください。