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交通事故に関し労働者から使用者への求償を認めた事例【判例紹介】

2020-03-03

業務中の交通事故による損害賠償に関し、被用者から使用者への求償を認めた事例(最高裁判例)がありましたので、紹介します。

平成30年(受)1429号 債務確認請求本訴・求償金請求反訴事件 令和2年2月28日最高裁判所第二小法廷 判決  破棄差戻 大阪高等裁判所

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/270/089270_hanrei.pdf

事案:X被用者は、Y使用者(貨物運送を業とする資本金300億円以上の株式会社)の従業員で、業務中の交通事故により、Aを死亡させた。Aの相続人は長男と次男であった。次男は、Y使用者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、訴訟上の和解が成立し、Y使用者は、次男に対して和解金1300万円を支払った。長男は、X被用者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、控訴審で、1383万円余り及び遅延損害金の支払を認める判決があり確定した。X被用者は、長男のために1552万円余りを弁済供託した。X被用者が、長男に弁済(供託)した金額につき、Y使用者に対し、求償金を請求したのが本件です。なお、Y使用者は、その事業に使用する車両全てについて自動車保険契約を締結せず、賠償金を支払うことが必要となった場合に、その都度自己資金によっていた(「自家保険政策」という)。

原審は、「被用者は、第三者の被った損害を賠償したとしても、共同不法行為者間の求償として認められる場合等を除き、使用者に対して求償することはできない」と判断した。

判示:最高裁は、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えその損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。」として、被用者から使用者に対する求償権を認めました。

「民法715条1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである(最高裁昭和30年(オ)第199号同32年4月30日第三小法廷判決・民集11巻4号646頁、最高裁昭和60年(オ)第1145号同63年7月1日第二小法廷判決・民集42巻6号451頁参照)。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。

また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ(最高裁昭和49年(オ)第1073号同51年7月8日第一小法廷判決・民集30巻7号689頁)、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。

以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。」

原審のように、使用者が先に損害賠償したときは被用者に対し求償できるのに、被用者が先に損害賠償したときは使用者に求償できないという解釈は、損害の公平な分担という見地から見ると、おかしいです。被用者からも求償できるというのは損害の公平な分担からいうと当然の解釈というべきです。

 

 

カテゴリー: 民事 

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