年金制度を守るための裁判をご存知ですか?
「年金制度を守るための裁判をご存知ですか?」
年金削減違憲訴訟弁護団 事務局長 喜田 崇之
皆さんが受給している年金額は、毎年の物価・賃金上昇に合わせて上昇するという「物価スライド」というルールが適用されています。これに加えて、平成27年4月分から、新たに、「マクロ経済スライド」が適用され始めることになりました。「マクロ経済スライド」とは、ごく簡単に言えば、物価や賃金が上昇しても、一定のルールに従って、年金額の上昇を抑えるというものです。この新しい「マクロ経済スライド」を今後30年間適用し続けると、厚生年金の2割、国民年金の3割が実質的に減額されると試算されています。
さらに、あまりメディアに取り上げられていませんが、政府・与党は、「マクロ経済スライド」のルールを、物価や賃金が下落した場合にも適用する法律案を通過させようとしています。もしそのような法律が成立すると、年金の減額はさらに進むことになり、我々の老後の生活は、年金によって維持することはできなくなります。
このように年金減額を加速させる「マクロ経済スライド」が違憲・違法であるとして、全国で4000人以上の原告が裁判をしていて、ここ大阪でも、100名を超える方が原告になっています。
ところで、先人達が積み重ねてきた年金積立金は、現在、時価総額で約130兆円もの金額があり、年金積立金管理運用独立行政法人(通称GPIF)が運用しています。
年金積立金は、これまでリスクの低い国内債券を中心に運用されてきましたが、安倍政権に代わってから、よりリスクの高い外国株式や国内株式への運用の割合を増やすことにしています(これが安倍政権下の株価を支えているのはご承知の通りです。)。しかしながら、平成27年度の厚生年金・国民年金積立金の運用実績は、5兆3098億円の赤字を計上し、平成27年7月~9月の3か月間だけで7兆8899億円もの損失を計上したことは、みなさんも新聞報道等で耳にされたかと思います(運用実績は、GPIFのホームページに公表されています。)。この損失のごく一部でも充当すれば、年金の減額は必要ありません。
年金額を減額しなければ年金制度が維持できないのではありません。むしろこのまま年金の減額を続けて、将来、大きく年金支給額を削減していけば、誰も年金制度を当てにすることができず、年金掛金を支払わなくなり、年金制度は瓦解してしまいます。何十年に渡って真面目に年金掛金を支払い続けてきた人々が、老後の生活保障にふさわしい年金をきちんともらえるような年金制度を維持する必要があると、私たちは考えています。
私たちは、将来の世代へ年金制度を守りたいという思いで、この裁判を闘っています。