河村武信弁護士偲ぶ会(高槻市)
昨年9月20日に亡くなった河村武信弁護士を偲ぶ会が一周忌に合わせて、9月25日高槻市民会館で開かれたくさんの人が参列しました
追悼集に寄稿した思い出を再録します 弁護士 井上 直行
1987年のポスター貼り弾圧事件の思い出
72時間の拘束時間が迫るなか、河村武信弁護士と僕らは検事に拘留請求せずに即時釈放するよう要請するため大阪地方検察庁に出向きました。しかし、検事室の前で、ドア越しに、検察事務官が、「検事は在室しておりませんし、弁護人が来られてもお会いしませんという伝言です。」と答え、会えません。僕らは困ったと思いましたが、河村弁護士は違います。河村弁護士は、ドアの向こうにいる検察事務官に向かって、丁寧に「主旨はわかりましたが、ドア越しに伝言するのは失礼ではないですか。検事の伝言なら検察事務官が弁護人に面と向かって伝えるのが礼儀でしょう」と諭しました。検察事務官は、そうだと思ったのか、ドアを5センチほど開けました。
そのときです。河村弁護士は、ドアをつかんでこじ開けようとしたのです。検察事務官は驚いて閉めようとしましたが、河村弁護士の足が挟まったのか「痛い!痛い!」と大声をあげました。検察事務官がはっとしたその瞬間に、河村弁護士は、ドアをこじ開け入室したのです。(河村弁護士は、足と同時にカバンを隙間に挟んでいたので、足は痛くない!)
中には、検事と当該被弾圧者がいました。取り調べ中だったのです。河村弁護士は、検事のウソを指摘することはせず、丁寧に、拘留請求せずに即時釈放するよう要請しました。当該被弾圧者が釈放されたのはその3時間後でした。
丁寧なことばの表の顔と知略に満ちた行動力がある裏の顔との落差こそ河村武信弁護士の魅力です。