大阪市の職員思想調査アンケートは憲法違反
思想調査アンケートは、やっぱり憲法違反だった
弁護士 杉島 幸生
2016年3月25日、大阪高裁第2民事部は、橋下徹元市長が大阪市の全職員を対象として実施した「アンケート」について、労働組合活動の権利や、個人のプライバシーを侵害する違法(憲法違反)なものであるとして、59名の原告に対しそれぞれ金5000円の支払いを命じる判決を下しました。これで橋下元市長は、この大阪高裁判決を含む4回の敗訴判決を受けたこととなります。
このアンケートが実施されたのは、2012年2月のことです。当時の橋下市長は、多くの市民から支持をうけたというだけではなく、マスコミからもまるで英雄のように持ち上げられ飛ぶ鳥を落とすような勢いでした。しかし、橋下元市長の手法は敵をつくりだしては、それを叩くことで人気をあげるというもので、このとき「敵」に選らばれたのが、大阪市の職員だったのです。大阪市の職員は、仕事もせずに組合活動や選挙活動ばかりしている、この調査は大阪市役所内のうみを出し切るためのもの、一見もっとな言い分のようですが、彼が実際にやったことは、労働活動に参加したことがあるのか、誘った人は誰なのか?、組合活動に加入しているかどうか、特定の政治家を応援する活動に参加したことがあるかどうか、そうした活動に誘ったのは誰か、などなど、橋下市長の強引な市政運営に反対しそうな人間をあぶり出し、圧力をかけようとするもので、組合活動の自由や政治活動の自由、思想良心の自由を侵すものだったのです。
今回、原告となった人たちは、市民のための大阪市役所をつくろうと奮闘してきた人たちばかりです。こうした人たちの取り組みを、市民を害するものと決めつけ排除の口実づくりとしようとしたのが、この「アンケート」でした。まさに「思想調査」だったのです。
今、国政の場面でも、「私が最高責任者だ」「私が決める」などと、憲法をないがしろにして省みようとしない政治家がはびこっています。こうした状況にもとで下された今回の判決の意義は、例え民意によって選ばれた政治家であっても、世論の支持があったとしても、してはならないことは、してはならない、という当然のことをあらためて確認したことにあります。憲法に反する政治が強行されようとするとき、それは違うと、声をあげる人がいなければ、憲法違反の現実がそのままつづくこととなります。憲法違反の現実を受け入れたくないのなら、私たちも声をあげつづけなればなりません。59名の原告の勇気がそのことを教えてくれているような気がします。