法律相談Q&A
借金をめぐる問題
- 借金の処理にはどのような方法がありますか
借金の処理には、大きく分けて自己破産、個人再生、任意整理があります。
自己破産は、裁判所での手続を経て、借金を返す義務を免れる制度です。
個人再生も、裁判所での手続きを経て、大雑把にいえば借金を5分の1から10分の1に減らしてもらって、これを分割で返していく制度です。
任意整理は、裁判所を通さずに、弁護士が1件1件の債権者と交渉をして、債務の額を減額してもらったり、将来の利息を止めたうえで、分割払いにしてもらうというものです。
それぞれの方法に利用条件、長所、短所がありますので、よく弁護士と相談して決めて下さい。ケースによっては、例えば破産以外の処理はできないというものもありますので、納得がいくまで相談をしていただくことが重要です。- 破産というのはどのような制度ですか
破産は、持っている財産をお金にかえて、その範囲内で債権者(お金を貸してくれた会社など)に借金を返し、それでも返しきれない借金は、返さなくてもよいとする制度です。
財産が特にない人は、書類だけで手続が進む同時廃止(どうじはいし)という方法があります。
持ち家や車、生命保険の解約返戻金など財産がある人は、破産管財人の監督のもと、破産管財人が財産を処分して債権者に配るという管財事件(かんざいじけん)になります。ただし、現金の場合、99万円までは、自由財産(じゆうざいさん)として、本人の下に残してもらうことができます。財産があっても評価額が低い場合など管財事件にならない場合もありますので、弁護士にご相談ください。
破産は、裁判所に申し立てると、破産手続開始決定(はさんてつづきかいしけってい)が出ます。これは、借金のほうが財産よりも多いということで、破産手続を始めるという決定です。
この決定が出ると、「破産者」になります。強制執行はできなくなります。
その後、債権者の意見を聞いたり、破産管財人が財産の換価と債権者への配当を行うという期間があり、特に問題がなければ、最終的に免責決定(めんせきけってい)が出ます。この免責決定が出て、初めて借金を返さなくてもよくなります。
免責決定は、浪費(ぜいたくをしたり、ギャンブルにより借金を作った場合)や人を騙して借金をしたりした場合、裁判所にうそを報告した場合など、認められない場合があります。ただし、正直に裁判所に報告することにより、裁量的に免責を認めてもらえる例外的な場合もありますので、弁護士に正直にお話しいただき、よくご相談して下さい。
また、①養育費や婚姻費用、②故意又は重大な過失によって加えた人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権も、個別的に免責されないことになっています。詳しくは弁護士にご相談ください。- 商売をしているのですが、破産したらやめないといけないですか
商売をされている場合、お店や事業用の財産、あるいは売掛金など、何らかの財産がある場合が多く、そのような財産は、破産管財人によりお金に代えたうえで破産手続きを進めていく必要が生じますので、基本的には商売は続けられないと考えたほうがよいと思います。
大阪地裁では、事業をされている方、事業を止めてから6か月以内の方については、原則として管財事件になるとされています。
ただ、たとえば、何らの事業用財産も不要な仕事など、ケースによっては、商売を続けられる場合もありますので、よく弁護士と相談して下さい。
商売を続けながら、借金を処理する制度としては、個人再生手続があります。事業用のリース物件などについては、返済を続けられるという制度もありますので、事業をされている方にはふさわしい制度です。- 自宅は持ち家なんですが、破産をしたらどうなりますか
自宅が持ち家の場合は、お金に代えて債権者に配分しますので、原則として残すことは困難です。
ただし、住宅の価値よりも住宅ローン等のほうがたくさん残っている場合(オーバーローン)は、処分をしてもお金になりませんので、破産の手続の中では売却されず、結果的には競売の形になることもあります。
借金の処理をしつつ、持ち家の自宅を残す制度としては個人再生手続が有効な場合があります。利用条件が法律で定められていますので、詳しくは弁護士にご相談ください。- 破産をしたら、どんなデメリットがありますか
破産をした場合、次のようなデメリットがあります。
- 自宅や車は売却され、保険は解約されるなど、債権者への返済に充てるため、資産を失います。ただし、多くの例外もありますので、弁護士にご相談ください。
- 破産をしたとの情報が信用情報機関に7年間登録されます。クレジットカードが使えなくなったり、金融機関からお金を借りることができなくなります。
- 選挙権はなくなりません。
- 戸籍に載ることもありません。
- 生活に必要な家財道具を失うことはありません。
- 警備員や保険外交員など破産者が就くことが禁止されている職業があります。詳しくは弁護士にご相談ください。
- 個人再生という制度があると聞きましたが、どんな制度ですか
個人再生は、裁判所を使って、借金の額を減らし、3年から5年の間で分割して返していく制度です。
住宅ローンのみ支払って自宅を残すことや、事業を続けながら借金を圧縮することができます。利用条件が法律で決まっていますので、詳しくは、弁護士に相談することをおすすめします。
個人再生には、2種類の手続がありますが、主に利用される手続(小規模個人再生手続)について、ご説明します。
まず、弁護士に依頼すると、弁護士が受任通知を出し、本人に対する取立ては止まります。ただし、自宅を残したい場合の住宅ローンや、事業を続けるために必要不可欠なリース料などについては、支払を続けることになります(なお、例外的に支払うこれらの債務については、利子も含めて全額を返すことになります。)
その後、裁判所に個人再生の申立を行ない、開始決定が出れば、定められた期日までに再生計画案を提出し、債権者の同意の有無を確認し、裁判所から認可されれば、その再生計画にしたがって返済を始めます。
個人再生を利用するための要件はいくつかありますが、たとえば、①一定の収入の見込みがあること、②債務の総額が5000万円を超えないことなどです。この計算も様々な条件に従って計算することになりますので、詳しくは弁護士にご相談ください。
返済することになる金額は、次のAとBの多い方です。A)合計債務額が
100万円未満 →その債務の額
100万円以上500万円未満 →100万円
500万円以上1500万円未満 →その債務の額の2割
1500万円以上3000万円未満 →300万円
3000万円以上5000万円以下 →その債務の額の1割
B)財産の清算価値が、上記Aで計算された金額を上回る場合は、財産の清算価値の金額を返済しなければなりません。この「財産の清算価値」は、「財産の価値」とは少しちがいますので、詳しくは弁護士に相談して下さい。- どんな場合に、個人再生を選択したらいいでしょうか
多くの場合、(1)住宅ローン付きの住宅を維持したいとき、(2)破産では、免責が認められない事情があるとき、(3)自営業の方が商売を続けたいとき、個人再生の利用を検討することになります。
破産では、(1)の場合、住宅ローンのみの返済が禁止され、結局、自宅を失ってしまいます。また、(2)破産は、浪費や詐欺等により借金をした場合に、免責(借金を返さなくてもよくなる決定)が出ないことがありますが、個人再生にはこのような条件はありません。(3)の事業者の場合も、破産では、事業用の財産が処分され、債権者への返済に回りますので、事業を続けることができません。
よって、これらの場合には、個人再生を利用するメリットがあります。
ただし、利用には法律で定められた条件がありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。- 任意整理というのは、どんなことをするのですか?
任意整理は、弁護士が金融業者と交渉して、借金の減額や利息の一部カット、分割返済の方法を決めて、合意をする手続です。
裁判所を通さずにしますので、費用や書類作成などの点で負担が少ない方法です。
信用情報には登録されますが、登録期間も5年であり、破産や個人再生の場合の7年に比べて短くなっています。- 最近、「過払い」という言葉をよく聞きますが、どういうことですか?
過払金というのは、お金を借りた人が貸金業者に返し過ぎたお金のことです。
借金の利率を定めた利息制限法という法律がありますが、大手も含めた多くの貸金業者は、過去、この所定の率を超えた率で貸付を行い、法律で認められた以上の利息を受け取っていました。
利息制限法が定める率は次のとおりです。① 10万円未満の貸金 年利20%
② 10万円以上100万円未満の貸金 年利18%
③ 100万円以上の貸金 年利15%
この払いすぎた利息は貸金業者に対して返還を求めることができます。ただし、最終の取引日から10年経てば、原則として返還を請求できないと考えられています。心当たりのある方は、お早めに弁護士にご相談ください。
- ヤミ金から借入をして、督促がひどくて困っています。
ヤミ金融とは、貸金業規制法による貸金業登録を受けずに貸金業を営んだり、法が定める上限金利を無視して、高金利を取ったりする業者です。
出資法で定められた率を超える高利の貸付は、裁判例で無効とされており、元金を返す必要すらない場合があります。弁護士にすぐにご相談ください。
また、無登録営業や、出資法所定の利率を超える率による貸付は犯罪です。ヤミ金融業者が家に取り立てに来た場合は、絶対に家に上げないで、すぐに110番して警察を呼んでください。
弁護士に依頼すると、ヤミ金業者に対する返済金を振り込んでいた口座が「犯罪利用預金口座」であるとして、金融機関に凍結依頼をすることも可能です。最近は、手口が巧妙化し、受け取りに金融機関の口座を使わないことも多いですが、返済先の口座が凍結されると、闇金融業者にとっては大きな痛手となります。
家族や親戚、職場に取り立ての電話があった場合「自分には関係がないから払いません。警察に通報します。」と断ってもらうようにお願いしておきましょう。- 死んだ親に借金があって、返せないのですが。
相続放棄(そうぞくほうき)の制度があります。
亡くなった人(ひそうぞくにん)が多額の借金をしていた場合など、財産よりも借金のほうが多い場合、配偶者や子・親・兄弟姉妹などの相続人がその借金を背負い込まなくて済むように、相続を放棄することができます。
家庭裁判所に相続放棄申述書を提出し、手続を行う必要があります。
注意点としては、(1)相続が開始したことを知ったときから3か月以内にしなければなりません。通常は、被相続人の方が亡くなったことを知った日から3か月ですが、借金があることを当初知らずに、あとから督促状などが届いて知った場合は、その督促状を受け取った日から3か月以内であれば、相続放棄を認めてもらえる場合があります。
また、(2)借金だけ放棄するということは許されません。相続財産である不動産なども放棄することになりますし、すでに相続財産を処分している場合は、相続の放棄はできなくなります。ご留意ください。- 信用情報とは何ですか。
信用情報とは、銀行や貸金業者、クレジット会社が、借金をした人の氏名、住所、生年月日、滞納状況などにつき登録し、各社で共有している情報です。俗にブラックリストとも言われます。信用情報は、ローンの申込みを受けるかどうか、クレジットカードを発行するかどうかの審査などに利用されます。
自分についてどのような信用情報が登録されているかは、信用情報機関に対し、開示を求めることができます。誤った登録がされていれば、訂正を求めることもできます。
滞納、破産、個人再生、任意整理などの事実は、信用情報として一定期間、登録されます。
「ブラックリストから消します」という広告がありますが、信用情報の抹消は、登録した金融機関や貸金業者等が行うのが基本です。このような広告は詐欺ですので、手数料を払ったりして、お金をだまし取られないように注意してください。- 昔の借金を返せという督促状が来たのですが、どうすればよいでしょうか。
銀行や貸金業者、クレジット会社からの借金は、最後に返済をしなければいけなかった日から5年以上経過すれば、返さなくてよくなる、つまり、借金を返す義務が消滅する場合があります。この制度を商事債権の消滅時効といいます(商法522条)。
他方、信用組合、信用金庫、公庫からの借金は、消滅時効のために必要な期間が10年です。
消滅時効に必要な期間が経過していても、途中で裁判を起こされていれば、消滅時効の期間は中断し、再度、5年又は10年の期間の経過が必要です。
また、消滅時効に必要な期間が経過した後に、僅かでも返済してしまうと、借金を返す義務がぶり返すことがあります。
ですから、金融会社から、随分前に借りたお金の返済を請求された場合、決して、その金融会社に連絡をとってはいけませんし、ましてや、その金融会社に、ほんの僅かでも返済してはいけません。
金融会社からそんな請求があった場合は、仮に、借金した日、最後に返済した日がわからず、最後に返済した日から何年経っているかどうかがかわらなくても、金融会社には決して連絡を入れないで、まず、弁護士に相談してください。
交通事故をめぐる問題
- 交通事故に遭いました。何をすればよいですか?
交通事故に遭った場合、被害者・加害者いずれの立場になっても、気が動転して何をすればよいかわからなくなってしまうことがあります。
自分自身の身を守るためにも、次の5つのことは頭の片隅に置いておいてください。※条文は2016年8月現在の道路交通法です。- 負傷者の救護などの措置
- 警察への報告
- 情報(証拠)の確保
- 保険会社への連絡
- 病院へ行く
以下では詳しくみていきます。
(1)負傷者の救護など
交通事故が発生した場合には、直ちに、以下の措置をとってください(緊急措置義務・72条1項前段)。ア 直ちに車両の運転を停止
イ 負傷者の救護
ウ 道路上の危険防止の措置
これらの措置をとらない場合には、最大で10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されてしまうことがあります(117条~)。
自転車等の「軽車両」の場合も対象となります。
また、自身に過失がなくても、上記措置の義務は発生するので、交通事故に遭った場合には、まず、負傷者の救護などの措置をとる必要があります。(2)警察への報告
交通事故に遭ったら、交通事故の発生日時・場所、人の負傷・物の損壊の程度、講じた措置などを警察官に報告してください(報告義務・72条1項後段)。その際、警察官から現場を去らないよう命じられることがあります(現場滞留義務・72条2項)。
報告義務違反に対しては、最大で3か月以下の懲役または五万円以下の罰金、現場滞留義務違反に対しては5万円以下の罰金が科されてしまうことがあります(119条10号、120条11号の2)。
交通事故証明書を発行してもらうための前提ですし、実況見分を行なってもらうためにも、警察への報告を行なう必要があります。(3)情報の確保
後に、言い分が異なり争いが生じたりすることがよくあります。そのようなときのために、可能な限り情報(証拠)を確保するようにしてください。どのような情報があるとよいか挙げてみます。(4)保険会社への連絡
ご自身が加入している任意保険会社にも連絡をしておいた方がよいでしょう。色々と相談に乗ってくれることもありますし、弁護士費用特約の案内をしてもらえる場合もあります。(5)病院へ行く
事故によって、少しでも体に異変があった場合には、とにかく病院に行って医師の診断を受けることをお勧めします。
事故直後は、たいしたことがないと思っていても、日が経つにつれて症状が悪化する場合もあります(事故直後は、事故に遭ったという緊張状態にあり、あまり痛みを感じないこともあります。また、あまりに日数が経過してしまった場合には、その症状が事故によるものか、因果関係を争われたりすることがあります)。- 相手方の情報
運転免許証(相手方の住所、氏名、生年月日)、自動車の車種・ナンバープレート(相手方の自動車の情報)、車検証(自動車の所有関係)、相手方が加入している自賠責および任意保険の会社名(賠償請求の前提)、相手方の勤務先など - 現場・事故状況の情報
お互いの車両の(特に損傷部分の)写真、現場の写真、相手の言い分・様子のメモ・録音、目撃者の連絡先・証言のメモ、ドライブレコーダーのデータ(上書きタイプの場合には、時間がたてば上書き消去される場合があります)、自身の負傷の写真
- 交通事故で家族が死亡してしまった場合、どのような請求ができますか?
日本の法律では、「金銭」での賠償が原則となっています。
そこで、その賠償額が適正な賠償額なのか、示談の際には綿密なチェックが必要です。
交通事故で家族がお亡くなりになった場合、以下のような損害の請求が可能です。- 財産的損害
※死亡までの損害については、ケガをされた場合の場合と同じです。
①積極損害
葬儀関係費など
②消極損害
逸失利益(被害者が死亡しなければ得られたであろう収入から本人の生活費などを控除したもの) - 精神的損害
・死亡慰謝料など
※お亡くなりになった本人の分の慰謝料に加えて、一定の遺族の慰謝料も考えられます。
- 財産的損害
- 交通事故でケガをした場合、どのような請求ができますか?
交通事故でケガをされた場合、以下のような損害の請求が可能です。
ケガの場合でも、様々な項目の賠償請求が可能です。
どのような項目の賠償請求が可能かについては、個々の事件によって異なります。適正な賠償を受けるためにも、ぜひ、専門家へご相談ください。- 財産的損害
①積極損害
・治療関係費用、付添看護費、入院雑費、通院交通費など
②消極損害
・休業損害、営業損害などの「消極損害」 - 精神的損害
・入通院慰謝料
- 財産的損害
- 交通事故で完治しないケガをした場合、どのような請求ができますか?
交通事故によるケガが、将来においても回復の見込みが無い状態を「症状固定」といいます。
完治しないケガのうち、①交通事故と相当因果関係があること、②医学的に証明または説明できるものであること、③労働能力喪失を伴うものであること、④自賠責保険の後遺障害等級に該当すること、の4つの要件をみたすものを、「後遺障害」と言います。
「後遺障害」が認められれば、以下の賠償請求が可能です。
- 財産的損害
・(後遺障害)逸失利益など - 精神的損害
・後遺障害慰謝料など
大切なのは、自身の後遺障害について、適切な等級の判断がされるかどうかです。
等級には、後遺障害の程度に応じて、1級~14級まであります。
等級が変わると、逸失利益も後遺障害慰謝料も金額が大きく変わります。
適切な等級認定を受けるためには、後遺障害に関する深い専門的知識と、数多くの後遺障害事例を扱った経験が必要です。
また、後遺障害等級に非該当の場合であっても、後遺症に苦しんでいらっしゃる方はたくさんいます。しかし、一定の場合には、等級認定が非該当であっても、後遺障害慰謝料が認められる場合があります。
したがって、後遺症に苦しんでおられる方、適正な等級認定を受けたいと考えておられる方、等級認定を受けたけれど自身の症状に見合った等級認定なのか疑問のある方、まずは専門家にご相談下さい。- 財産的損害
- 交通事故で車が破損した場合、どのような請求ができますか?
交通事故によって自動車や時計などの物が壊れる被害を「物的損害」といいます。
すぐに思いつくものに「修理代」がありますが、よくみると、他にも請求が可能な項目があります。
どのような損害について請求が可能なのかについては、専門家によるアドバイスを受けてください。思わぬ見落としがあるかもしれません。
・修理代、代車使用料、(全損の場合の)登録諸費用、(場合によっては)評価損など- 事故の態様について、加害者側と言い分が食い違っています。過失割合はどのように決まりますか?
誰が決めるのか?
①当事者の合意もしくは②裁判所
保険会社も、一定の過失割合を提示してくることがありますが、あくまでも保険会社(相手方の強い意向が働いている場合もあります。)の見解です。保険会社(相手方)が提示する過失割合に納得できなければ、基本的には訴訟を提起するなどして裁判所に判断してもらうことになります。どうやって決めるのか?
過失割合は、どちらにどれだけの責任があるのかの割合です。
過去の交通事故の裁判例などを集積・分析し、様々な事故類型において、一定の過失割合の判断基準を示した資料として、「別冊判例タイムズ38合 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(判例タイムズ社)があります。
「歩行者対自動車」「横断歩道での事故」「交差点における出会い頭事故」などの類型ごとに、基本的過失割合とこれを修正する場合の修正要素(修正率)が掲載されています。
別冊判例タイムズ38号は、裁判所も参考にしているものですが、個々の事故における具体的な過失の立証については、専門的知識が必要です。 また、別冊判例タイムズ38号ではカバーできないような事故類型もたくさんあります。
事故の実態に合った過失の立証のためには、綿密な証拠収集活動(現場調査、刑事記録の収集・分析など)や裁判所において立証の工夫が必要な場合が少なくありません。
保険会社の提示する過失割合に納得ができない場合、まずは専門家にご相談下さい。- 事故を起こしてしまったけど、相手から法外な請求をされて困っています。
- 事故に乗じて不当な利益を目論む者や、明らかに相手側に過失があるにもかかわらずこれを認めず不当・法外な請求を行なってくる者もいます。
このような場合にも、適正な賠償額・過失割合を算定の下、不当・法外な請求を阻止するため、弁護士が全面的にサポートします。 - 健康保険は使えますか?
「使えます」
相談を受けていると、交通事故には健康保険が使えないという話を聞きますがそのようなことはありません。
当時の厚生省も次のような通知を発しています。
「自動車による保険事故の急増に伴い、健康保険法第67(現行57)条(第69条ノ2(現行58条)において準用する場合を含む。) 又は国民健康保険法第64条第1項の規定による求償事務が増加している現状にかんがみ、自動車損害責任保険等に対する保険者の求償事務を下記により取扱うこととしたので、今後、この通知によるよう保険者に対し、必要な指導を行われたい。」(昭和43年10月12日保険発第106号各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局保険課長国民健康保険課長通知)ただし、交通事故の場合には、病気の場合と違って、手続が必要です。
「第三者行為による傷病届」と呼ばれるも手続です。
交通事故の場合、治療費は本来加害者が負担するべきものです。加害者が支払うべき治療費を保険制度が一旦立て替えて、後で加害者に請求することになるのです。そのためにも、「第三者行為による傷病届」の手続を行ってください。自費診療(健康保険を使わない)で受診することも可能ですが、健康保険を使われた方がメリットある場合が多いです。
①自賠責保険のみの賠償を考えた場合、傷害で自賠責から支払われる上限額は120万円までです。
他方、傷害によって請求できる賠償額は治療費だけではありません。
そうすると、自費診療で受診した場合、治療費が高額となり、治療費だけで120万円の上限に達してしまう事も考えられます。その結果、治療費以外の賠償が満足に受けられない事態になることもあります。
②被害者本人が立て替えなければならないとき、負担が軽くてすみます。- 労災保険は適用されますか?
通勤中、仕事中の交通事故には労災保険が適用されます。
このような場合には、労災保険、自賠責保険どちらも適用可能ですが、両方を併用することは原則としてできません(例外として、休業特別給付金が挙げられます)。
労災保険、自賠責保険それぞれ支払条件(支払額)が全く異なります。
したがって、どちらの保険を適用するのが有利なのか、これはケースバイケースなので、専門家にご相談ください。- 交通事故でケガをしましたが、治療費の負担が心配です。
治療費の負担については、最終的には加害者(あるいはその保険会社)に請求できるとしても、病院としては診察を受けた被害者本人に対して治療費を請求するのが原則です。
ただ、病院によっては加害者の保険会社に直接請求してくれる場合もあり、そのような病院も多いように思います。
そこで、まずは「自分は交通事故の被害者なので、支払いについては加害者の保険会社に直接請求して欲しい」と、病院に相談してみることをお勧めします。あわせて、保険会社にもそのように伝えてください。もっとも、病院によっては上記のような対応をしてくれないことも考えられますし、事故状況に争いがある場合や、被害者に過失が大きいと考えられる場合など過失の程度によっては保険会社が治療費の支払いに応じてくれない場合もあります。このような場合でも、交渉によって、一定額を支払ってくれる場合もありますので、一度専門家にご相談されることをおすすめします。
病院または保険会社が、上記のような対応をしてくれない場合、加害者本人が立て替えてくれない限り、被害者が一旦支払うしかありません。ただ、その場合は必ず領収書を保管しておき、かつ自分の健康保険を使うようにしましょう。
なお、加害者(あるいは相手保険会社)が治療費を支払ってくれない場合でも、自分が加入している任意保険で人身傷害補償保険を付けていれば自分の保険から治療費等が支払われます。
したがって、事故に遭ったときには、自分の任意保険の契約内容もしっかり確認しましょう。- 保険会社が治療費の支払いを打ち切ると言ってきました。
別のページにもありますが、本来は、治療費は被害者が病院へ支払うのが原則です。
もっとも、一定の場合に、示談がまとまる前から、保険会社が医療機関に直接治療費を支払う場合があり、これを「内払い」といいます。
しかし、原則は、治療費は被害者が支払うのが原則ですから、「内払い」を強制することはできません。ただし、このような場合でも、治療費の支払いを継続するよう「交渉」を行なうことは可能です。
保険会社は、被害者の診断書をよくチェックをして、治療期間のだいたいの目途を把握します。場合によっては、医師に直接問い合わせをすることもあります。その結果、保険会社が想定している治療期間を超えるようになると、治療費の打ち切りを言ってくることがあるのです。そのような場合には、治療を継続する必要性について、保険会社にしっかりと伝える必要があると思います。診断書などにも治療継続の必要性について医師に記載してもらい、客観的にも治療を継続する必要性について証拠を残しておくことも有効かと思われます。
「交渉」の結果、治療費の支払を打ち切られた場合でも、ひとまず自身で立て替えておき、示談交渉の際に請求することも可能です。
もっとも、治療費は、その交通事故と「相当因果関係」にある範囲で認められるものであり、法的判断も必要ですので,まずは,専門家にご相談ください。- 専業主婦ですが,交通事故で家事ができなくなった分の賠償は認められますか?
専業主婦のような「家事従事者」の方も,交通事故によって家事ができなくなった場合の休業損害が請求できます。「家事」も「労働」の一種だからです。
もっとも専業主婦の方には賃金は観念できないので,原則として賃金センサスの平均賃金を,その基礎の額として計算します。
仕事をしながら家事労働を行なっている方も,実際の収入が,上で述べた平均賃金を下回るときには,原則として,平均賃金を請求することができます。
- 保険会社が示談を迫ってきています。
保険会社の提示額が適正な金額かどうかわかりません。 他のページでも紹介しておりますが,損害項目に不足はないか,損害額は適正か,過失割合の判断は適正化など,検討すべき要素は極めて多岐にわたります。
まずは,保険会社からの提案書をお持ちになって,専門家へご相談されることを強くおすすめします。- 弁護士に依頼するとどのようなメリットがありますか?
-
- 適正な賠償額を知ることができる。
適正な賠償額を判断するためには,民法,道路交通法,労災法などの法的知識はもちろん必要ですが,他にも,医学的知識,工学的知識,自動車に関する知識など,多面的な知識が必要です。
創設依頼60年以上の伝統を有し,数多くの弁護士を擁する関西合同法律事務所では,各分野の知識を駆使して,多くの交通事故案件を解決してきました。
経験豊富な弁護士によって適正な賠償額を知り,弁護士による,交渉,訴訟等の結果,保険会社が提示する賠償額が大幅にアップすることも少なくありません。
適正な賠償額を知るためにも,是非,関西合同法律事務所へご相談ください。 - 保険会社(相手方)との交渉による,精神的負担やわずらわしさから解放される。
示談交渉には,多大なるエネルギーが必要です。相手方の対応次第では,非常に大きなストレスを受けることもあります。交通事故で怪我をされていればその苦痛は一層大きくなる事でしょう。
しかし,弁護士に依頼することで,そのような負担は大きく減少することになります。
- 適正な賠償額を知ることができる。
- 弁護士に依頼する費用が心配です。
弁護士の費用については,弁護士から見通しを説明させていただいています。
ご不明な点があれば,遠慮なくおっしゃってください。納得のいくご説明をさせていただきます。
一定の場合には,法テラスのご利用も可能です。
また,最近増えている「弁護士費用特約」が,ご自身や家族が入っている保険についていることがあります。ご自身の自動車保険だけではなく,ご家族の(場合によっては別居している家族も)保険契約(場合によっては,傷害保険等にもついていることがあります)をよく確認してみてください。
労働関係をめぐる問題
- 突然、明日から来なくていいと言われました。どうしたらいいでしょうか。
まず、会社があなたに退職を求めただけなのか、解雇通告なのか、確認を求める必要があります。
退職を求められた場合に「退職するかしないか」はあなた自身が決めることで会社は押しつけることはできませんので、嫌なら断れます。解雇ならその理由を聞いて、納得できなければ、解雇が不当であることをはっきり言いましょう。不当な解雇なのに「退職届」を書かせて辞めさせる場合がありますので、絶対に応じないで下さい。会社が、あくまでも解雇を言い張る場合には、至急に労働組合か弁護士にご相談下さい。今後の対応の仕方についてアドバイスします。
- 会社が倒産してしまいました。未払いの給料があります
法律上、未払い給料や退職金には、他の債権者に優先して弁済を受けられる先取特権という権利が認められています。給料の根拠となる給与明細書、賃金台帳、源泉徴収票、就業規則などを集めましょう。その上で、1人からでも加入できる労働組合に加入して会社と交渉したり、破産手続がとられて会社に破産管財人就いている場合には、破産管財人に連絡をとるようにしましょう。
会社が倒産して、賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、未払い賃金を会社に代わって立て替えてくれる「未払賃金の立替払制度」という制度があります。上で紹介した資料を集めて(特に賃金台帳などの資料が重要です)専門家にご相談ください。
- 上司が代わってから、ひどいいじめにあっています。
上司などがその立場を背景として行ういじめはパワーハラスメントと呼ばれています。
村八分にしたり、必要のない業務を命じたり、業務の分担に差別を設けたり、退職を強要したり、誹謗・中傷を繰り返したりなどなど、態様はさまざまですが、労働者の人格権を侵害するという点で共通しています。
この場合、直接の加害者である上司に対してはもちろん、会社に対しても、職場環境保持義務違反として、損害賠償を請求できることになります。また、いじめによる配転命令などは無効となる場合があります。いじめにより精神疾患を患ったと認められる場合には労災補償を受けることもできます。
- 上司のセクハラがひどく、ノイローゼになっています。
性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)も労働者の人格権を侵害するもので、いじめの場合と同様に考えられます。
加害者は、上司に限らず、同僚・部下の場合もあり得ます。
また、加害者・被害者とも女性か男性かは問わず、女性同士・男性同士の場合もあり得ます。いじめ、セクハラとも、秘密裏に行われることが多く、被害者も声をあげにくい状況にあるのが通常です。
信頼できる身近な人や労働組合、弁護士にまずは相談していただきたいと思います。- 1年契約を更新してきましたが、来年で契約を更新しないといわれました。
契約期間が通算で5年を超える場合には、労働者の申込みにより、無期の労働契約に転換するという制度があります。
また、5年を超えない場合であっても、これまで当然に更新されてきて、実質的に期間の定めがないのと異ならない状態だった場合や、労働者が期間満了後も雇用契約が継続されると期待することに合理的な理由がある場合には、雇止めは自由にはできないことになっています。
その判断は、職務の継続性や、更新を期待させる使用者の言動、更新の手続がきっちり行われていたか、これまでの取扱いなどを考慮して行うことになります。期間満了だからと諦めないでまずは相談いただきたいと思います。
なお、労働者は雇止めの理由(期間満了以外の実質的理由)の明示を求めた場合、使用者は文書でこれを労働者を交付しなければならないとされています。- 突然、派遣契約を打ち切るとのことで、仕事がなくなりました。
- 派遣労働は、派遣元会社と労働者との間で雇用契約を結び、派遣元会社と派遣先会社が労働者派遣契約を結ぶという特異な契約関係にあります。
派遣元は、合理的な理由なく労働者を解雇できませんし、雇止めも制限される場合があります。
派遣先は労働者を実際に使用していたという責任があり、その就労が違法だった場合には雇用責任が生じる場合もあります。
労働組合が派遣元・派遣先に対し団体交渉する中で解決できる場合もあります。
理不尽な理由で打ち切りをいわれた場合には、諦めないでご相談いただきたいと思います。 - 残業代を定額で支払っているので、新たに残業代を支払う義務はないと言われました。
「40時間分の残業代を含む」「残業手当5万円を支給する」など、残業代を定額で支払うという形式をとっている会社があります。
このような場合でも、残業代としていくら支払われているのか不明確であったり、実際の残業代が定額で支払われる金額を上回っているのに差額分が支払われない状態が恒常化している場合などは、この扱いが無効となる場合があります。雇用契約の内容や就業規則の内容を確認して判断する必要がありますので、ぜひ弁護士に相談してください。
- 管理職の人には残業代が支払われないと言われ、残業代が支払ってもらえません。
「管理職には残業代を支払う必要がない」として残業代を支払わない会社があります。
これは、労働基準法上の「管理監督者」に当たるという主張ですが、「管理監督者」に当たると認められる事例はごく一部です。「管理監督者」に当たるための要件は厳しいのです。
会社内での地位や労働条件の内容を確認して判断する必要がありますので、ぜひ弁護士に相談してみてください。
相続をめぐる問題
- 内縁関係の夫が、職場で労災事故により、死亡しました。
わたしは戸籍上の妻ではないのですが、労働災害の補償をもらうことはできますか。
年金はどうでしょうか。 - 労働災害の補償は、戸籍上の妻でなくても、事実上婚姻関係と同様の事情にあった内縁の妻であれば、受け取ることができます。但し、死亡した内縁の夫に、戸籍上の妻もいるという場合には、そのようにならない場合もあります。
年金も同様です。
いずれも、具体的な事情により、結論が異なりますので、弁護士に相談してください。 - 父が死亡したのですが、父は遺言を書いており、その遺産は全て長男の兄に相続させるというものでした。
私には、相続する権利はないのでしょうか。 そんなことはありません。
貴方には、遺言によっても侵されない権利(「遺留分権」と言います)があるからです。
注意しなければならないのは、この遺留分という権利を実現するには、「遺留分減殺請求」という意思表示をしなければならないこと、この請求権は、1年以内に行使しなければならないとされていることです。できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。- 夫が死亡後、夫に大変高額な借金があることが後で分かった場合、どうしたらよいでしょうか。
- 死亡した夫に借金がある場合、死亡したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄という手続きをとれば、死亡した夫の借金との縁を切ることができます。
死亡したことを知ってから3か月が経過してしまった後に、夫に借金があったことがわかったという場合も、借金を知ってから3か月以内なら、相続放棄が間にあう可能性もあります。ですから、この場合も、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
医療・病院をめぐる問題
- わたしは、ある病院で腰痛の手術を受けました。
脊椎を削るような大手術々でしたが、腰痛が治るどころかおしっこが出るか出無いか分からなくなってしまいました。
何か、手術に問題があったと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。
法律事務所に相談するとどの程度の費用と時間がかかりますか。 医療過誤の可能性があります。
つまり、医師の過失により何らかの障害が生じているということです。
もっとも、医療過誤であることの立証は非常にハードルが高いと言われており、すぐに裁判をするという選択には至りません。まずは、証拠を集める必要があります。
証拠を集める方法として最もよく利用されるのは「証拠保全」という手続です。これは、裁判所を使って強制的にカルテ等を保全できるという手続です。
証拠が隠滅されないといったメリットがあります。
証拠が改ざんされる恐れがあまりないと思われるケースでは、窓口でカルテのコピーを下さいと要求することもできます。個人情報保護法では、本人の申出があれば開示しなければならないと規定されています。
証拠を集めたあとは、証拠の検討と文献の検討を行います。これによって、医師の過失を立証できるかどうか検討することとなるわけです。
立証が可能だと判断できた場合、相手方に対して、交渉をすることが多いです。交渉が決裂した場合、裁判の提訴ということも考えられるでしょう。
もっとも、医療過誤の場合、弁護士費用に加えて、証拠保全費用、医師の鑑定費用等がかかり、通常の民事裁判よりも高額な費用がかかります。
また、証拠保全はしたが、過失の立証が不可能だと判断され、それ以降の手続には進まない可能性もあります。
そのため、事件の目途や、経費、時間の点を、弁護士と納得がいくまでよく話し合った上で、進めていくことが大事です。- 母が入院したところ、病院から多額の「差額ベッド代」の請求がきました。
こちらから個室を希望したわけではないのですが、支払わないといけないのでしょうか。 差額ベッド代の請求にどう対応したらいいのでしょうか。
差額ベッド代は、混合診療として認められていますので、患者の同意がなければ請求することはできません。もっとも、「同意」したくはないが、「同意せざるを得なかった」場合があります。
この場合にも、差額ベッド代を支払わなければならないのでしょうか。
厚生労働省の通達によると、特別室の提供は、「患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があ」るとされています。
また、特別室へ入院させた場合には、「料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと」「構造、料金等について明確かつ懇切に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること」「同意は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うこと」(つまり同意書)を病院側に求めています。さらに、特別の料金を求めてはならない場合として、
①同意書による同意の確認を行っていない場合
②患者本人の「治療上の必要」により特別室へ入院させる場合(救急患者、術後患者等であって、症状が重篤なため安静を必要とする者等)
③病棟管理の必要性等から特別室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合(院内感染をを防止するため等)とされています。個室が空いていないのでと説明されて個室に入院となる場合が多いのですが、このような場合支払いを拒否できます。病院と交渉をされるのがよいでしょう。
夫婦関係をめぐる問題
- 配偶者が浮気をしているようです。
離婚をしたいのですが、相手は応じてくれません。どうすればいいですか。 - 配偶者の浮気は民法770条1項1号の「不貞な行為」に当たりますので,裁判により離婚を請求することができます。
もっとも,まずは話し合いによる解決が望ましいとの考えから、裁判を起こす前に離婚調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法257条1項)。
また、裁判では、配偶者の浮気が証拠上認められない場合、離婚が認められません。
そのため、どのような証拠があればよいかなど、弁護士にご相談することをお勧めします。 - 離婚の調停とはどのような手続きですか
- 調停は、裁判官1名と裁判所が選ぶ男女2名の家事調停委員の3名による調停委員会が間に入り、当事者それぞれから交替に言い分を聞き、話し合いによる解決を目指す手続きです。当事者からの聞き取りはもっぱら家事調停委員が行います。
調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
話し合いがまとまれば、離婚調停が成立し、その調停は判決と同一の効力を持ちます(家事事件手続268条1)
離婚の場合、夫婦関係調整(離婚)の調停を申し立てることになります。申立書の記載例は最高裁判所のホームページからダウンロードできますが、どのように記載してよいか分からない場合などは、弁護士にご相談ください。 - 調停では、相手が必ず出てくるのですか。もし、相手方が出て来なかったらどうなりますか。
調停では、相手が必ず出てくるとは限りません。裁判所から期日を書いた呼び出し状が送られますが、住所が不明であったり、あるいは、相手方が受け取っても出頭しなかったりすることがあります。相手方が出頭しない場合、強制的に裁判所に連れてくるということは行われていません。
事情によりますが、相手方が調停に出てこない場合は、調停が成立しないことになります(調停の不成立)。そのため、手続を進めるためには裁判を提起しなければなりません。裁判では、所定の手続にしたがって、定められた期日に出頭しなければ、訴訟を提起した者の言い分を全て認めたこととなりますので、多くの場合、相手方は出頭してきます。- 調停のなかで、夫婦の財産をどう分けるかも話し合うことができるのですか
可能です。
結婚前からもっていたその人の財産は別として、結婚後にきづかれた財産は、たとえ登記の名義や預金の名義が一方の名義となっていても、基本的には二人の共有(1/2づつ)と推定されます。
- 離婚の調停の際、話し合いがまとまらない場合は、どうなるのですか。
離婚の調停で、当事者間に合意が成立する見込みがないとして調停は成立しないことになります(調停の不成立)。その場合、さらに手続を進めるためには、離婚の裁判(訴訟)を起こさなければなりません。
離婚の調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てる必要がありますが、離婚の裁判(訴訟)は、自分の住所地を管轄する家庭裁判所へも起こすことができます。もっとも、調停を行った裁判所とは異なる裁判所へ裁判を起こす場合には、「調停不成立証明書」の提出を要する場合があります。
また、調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に裁判(訴訟)を起こした場合には、調停申立時に訴えの提起があったものとみなされ、一定の場合にも出訴期間が過ぎてしまうことを回避できるほか、裁判所の手数料(印紙代)が調停分だけ安くなります。- 夫が家を出て行ってしまい、生活費を入れてくれません。
離婚を考えているのですが、当面の生活費が欲しいです。どうすればいいですか。 結婚している間の生活費を「婚姻費用」といいます。
夫婦は、その資産、収入、その他の事情を考慮して、婚姻費用を分担する義務があります。養育費(離婚後の子の養育のための費用)とは異なり、一方の配偶者の生活費も含んでいます。婚姻費用が払われない場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てます。具体的な婚姻費用の額は、子供の人数や夫婦双方の収入額等によって変わってきますので、弁護士にご相談ください。家庭裁判所でも話し合いがつかない場合は、裁判所が審判によって金額を決定することになります。
現行では、義務者(相手方)には、婚姻費用分担請求調停のあったときから支払い義務が生じるとの運用がなされているので、話し合いがまとまらない場合には、できるだけ早く調停の申立をすることをおすすめします。もちろん、相手方が任意に支払ってくれる場合には調停申立の必要はありません。
具体的な婚姻費用の金額(月額)は、現在では、家庭裁判所が参考にしている「婚姻費用の算定表」に基づいて算定されています。「婚姻費用の算定表」については、インターネットで簡単に見ることができますが、詳しくは、弁護士にご相談ください。
調停で決まった婚姻費用が支払われない場合には、給料や預金などを差押えて支払わせることができます。給料は2分の1まで差押えできます。また、支払義務者が自己破産しても、婚姻費用は支払わなければならず、免責されません。- 配偶者が浮気をしています。その証拠もあります。
愛人に対して損害賠償ができると聞いたのですが。家庭裁判所に行けばいいのでしょうか。 浮気相手に対して損害賠償(慰謝料)を請求することができます。
慰謝料の額については、浮気にいたった経緯や期間など、いろいろな事情が考慮されます。
請求の方法としては、①交渉、②調停(裁判所を使った話し合い)、③裁判、があります。裁判所を利用する場合、通常は不法行為による損害賠償請求となりますから、貴方がお住いの地域を管轄する地方裁判所に申し立てをすることとなります。離婚訴訟と一緒に起こすような場合は、どの裁判所になるのかは、やや複雑ですので、弁護士にご相談してください。
なお、夫婦関係がすでに破綻した後に、不倫関係になった場合は、慰謝料請求が認められません。
子どもをめぐる問題
- 親権とはなにですか
未成年の子(20歳未満の子)の身上を監護教育し、財産を管理するために、父母に与えられた身分上、財産上の権利義務の総称で、民法818条~837条で詳しく定められています。親権を行う者を「親権者」と呼びます。
父母が婚姻中は、原則として、父母が共同して親権を行使します(民法818条3項)。養子縁組をした子に対しては養親、父が認知した非摘出子に対しては原則として母が親権を行使します。
父母が離婚するときには、父母のうち一方を親権者としなければなりません。現行法上は、父母が離婚には合意していても双方が親権者としての地位を譲らなければ離婚することができません。
話し合いがつかなければ、父または母からの請求によって、家庭裁判所が審判によって父母の一方を親権者に指定します。また、裁判離婚の場合には、家庭裁判所が判決によって一方を親権者と定めます。
制度上は、親権の内容のうち子どもの監督教育(子どもの世話)をする者を親権者とは別に監護者とすることもできます。もっとも、子どもの利益を考えると親権者と監護者が別々になることは好ましいことではないとしてあまり奨励されていません。
また、いったん親権者が定められても、子の利益のために必要があるときには、子の親族から親権者の変更を求める審判の申立をすることができます。親権喪失、親権停止、管理権喪失の調停・審判の申立の制度もあります。- 親権者でなければ、子どもと会うことができないのですか
離婚後、親権者とならなかった親も、子に会うことができます。これを面接交流と呼びます。
父母が離婚しても、親は子の親であり、子は親の子であることに変わりはありません。面接交流は、子育てにかかわる親の権利および義務であると同時に、親の養育を受ける子の権利でもあるとして認められています。面会交流は、離婚前の別居期間中にも、離婚後にも必要となります。
意を要するのは、親の利益と子の利益が対立する場合には子の利益が優先されることです。
離婚する(した)父母間の協議で、具体的な面会交流の回数や方法を決めることができない場合には、家庭裁判所へ面会交流を求める調停の申し立てをすることになります。離婚調停の中でも話し合いは可能ですが、具体的な協議が整わなければ別に面会交流のための調停の申し立てが必要になります。調停でも協議が整わなければ自動的に審判に移行し裁判所が決定をします。面会交流の具体的内容が調停の争点となる場合には、家庭裁判所調査官(専門家)が調停に関与して、親との面接の様子を観察したり、子と面接して子の気持ちを確認するといったことも行われます。- 養育費を請求したいのですが、いくら請求したらいいのでしょうか
養育費の金額や支払方法なども、相手方との話し合いで決めることができます。話し合いで決めることができなければ、調停または審判の申立をして支払いを請求することができます。離婚調停の申立をする場合には、通常、併せて申立をします。
請求金額は、現在では、家庭裁判所が参考にしている「養育費算定表」に基づいて算出されています。
「算定表」は、養育しなければならない子の年齢(14歳以下か、15歳以上か)と人数、養育費を請求する側の権利者の年収、支払い義務を負う義務者の年収等で算出する仕組みになっています。
「算定表」は、インターネットで簡単に見ることができますが、詳しくは、弁護士にご相談ください。
また、調停や裁判で決まった養育費が実際に支払われない場合には、給料や預金などを差押えて支払わせることができます。給料は、2分の1まで差押が出来ます。また、支払義務者は自己破産しても婚姻費用は支払わなければならず、免責されません。- 現在、養育費を毎月受け取っています。
子どもが高校や大学へ行くころになると、いまよりも多くの養育費がかかるのですが、増額してもらうことはできないでしょうか。 協議によるものであれ、調停や審判によるものであれ、いったん取り決められた養育費の内容の変更が全く認められないわけではありません。
扶養の程度・方法、権利者の経済的・社会的状況、義務者の状況など一切を考慮して「事情の変更」が認められると判断された場合には、変更が認められます。
改めて、協議をすることになりますが、協議ができなければ、養育費変更の調停の申し立てをすることになります。ケースバイケースによりますので、詳しくは、弁護士にご相談ください。
- 離婚に伴う年金分割とは、どんな制度ですか。
離婚等した場合に、一定の条件に該当したとき、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。
実際に支給される年金額が分割されるのではなく、年金額を計算する基礎となる標準報酬額等が分割されるという制度です。
離婚日の翌日から起算して2年を経過するまでに請求しなければなりません。分割する割合について、当事者双方での合意または裁判手続によって、決める必要があります。
離婚調停の申立や離婚裁判を起こす場合に、併せて、年金分割の按分割合の決定を求める申立をすることができます。
その際、「年金分割のための情報通知書」が必要となるので、最寄りの年金事務所、共済組合等で取り寄せてもらわなければなりません。
また、裁判所で決定されるのはあくまでも分割の按分割合であって、実際に年金分割制度を利用するためには、一定の期間内に、年金事務所、共済組合等へ請求手続を行う必要があります。
詳しくは、弁護士にご相談ください。なお、上記に加え、平成20年5月1日以降は、平成20年4月1日以降の婚姻期間中に国民年金の第3号被保険者であった期間のある一方配偶者は、請求をすれば、国民年金の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができます。
刑事をめぐる問題
- 友人が覚せい剤の使用で逮捕されました。しかし弁護士に依頼するお金はありません。どうすればいいですか
突然、逮捕された人は不安で一杯です。そのため嘘の自白をしたりすることも少なくありません。ですから一刻も早く弁護士に相談することが大切です。
そのため各地の弁護士会は、逮捕されている人に無料で弁護士を派遣する当番弁護士制度を作っています。また、身体拘束が続き、その後も継続して弁護士に相談したいけどお金がないという人で、逮捕容疑となった罪が「死刑又は無期もしくは長期3年を超える懲役、禁固」にあたる場合は国の費用で国選弁護人を依頼することができます。
覚せい剤使用の罪は、懲役10年以下(覚せい剤取締法)ですから、国選弁護人を依頼することができます。そのことを逮捕されている友人にぜひ教えてあげてください。- 逮捕されたあと、どのくらい身体拘束が続くのですか
犯罪容疑で警察などに捕まることを「逮捕」といます。
被疑者を逮捕した捜査機関は、48時間以内(逮捕から最大72時間)に検察官に事件をまわし、事件を担当する検察官は24時間以内に引き続き身体の拘束を続ける手続(これを「勾留」といいます)に入るか、釈放するかを決めなくてはなりません。裁判所が勾留を決定すると検察官は、原則10日以内に起訴するかどうかを決めなくてはなりません(但しさらに10日の延長が認められる場合も多々あります)。つまり逮捕後最大23日で起訴されるかどうかが決まることとなります。不起訴となればその時点で釈放されます。しかし、起訴されれば引き続き勾留が継続されることになります。ただ、起訴されると保釈の請求が可能となりますので、できるだけ身体拘束を短くするためにも早めに弁護士に相談することが大切です。
- 保釈とはなんですか
起訴後、裁判所の許可を得て、保釈金を裁判所におさめることで身体拘束から解放する手続のことをいいます。
起訴されると被疑者から被告人と呼ばれるようになります。起訴後も身体拘束が続く被告人は、裁判所に身体拘束をやめるよう保釈請求することができます。保釈が認められるか否かはケースバイケースですが、保釈のための条件づくりのためにも早めに弁護士に相談することが大切です。
- 保釈保証金とは何ですか
裁判所は、身体拘束されている被告人を保釈するときには、必ずお金を納めることを条件とします。このお金のことを「保釈保証金」といいます。
「保釈保証金」が納められなければ、保釈の決定があっても釈放されません。
保釈保証金は、被告人が逃走することを防止するために納めるものですから、逃走したり隠れたりせずに裁判に出頭して判決を受ければ、例え有罪判決であっても返ってきます。
反対に逃げ隠れして保釈が取り消されれば、没収されることとなります。- 執行猶予とは何ですか
懲役や禁固などの有罪判決を受けても必ず刑務所にいかなければならないわけではありません。裁判所は被告人の更正に期待して1~5年の期間内で刑務所などへの収監を待つという判決を下すこともあります。これを執行猶予といいます。
裁判所が定めた執行猶予の期間内に別の罪で有罪判決を受けることなく過ごすことができれば判決の言い渡しは効力を失い、もうその罪で刑務所に行くことはありません。反対に別の罪を犯し有罪判決となれば、執行猶予は取り消され、前の判決で言い渡された期間と、別の罪で言い渡された期間を併せて刑務所などに収監されることとなります。
このように執行猶予付判決も有罪判決ですから、執行猶予付判決をもらった被告人はそれに安心せず、身を引き締めて執行猶予期間を過ごさなくてはなりません。